農林家経営動向調査の概要
調査の目的
本調査は、中山間地域の農家及び林家の農林業及び関連事業の経営実態並びに関連事業への就業等による所得の獲得状況を把握し、中山間地域対策推進の基礎資料を整備することを目的とする。
調査の沿革
農林家経営動向調査は、中山間地域の農家及び林家の農林業及び関連事業の経営実態等を把握し、中山間地域等の農業の生産条件に関する不利を補正するための支援施策等の検討に必要な基礎資料の整備を目的として平成9年に開始し、毎年実施した。
平成12年度に中山間地域等直接支払制度が創設されたことに伴い、本調査の所期の目的が達成されたことから、平成13年の調査をもって終了した。
調査の根拠法令
統計法(昭和22年法律第18号)第7条に基づく指定統計調査及び統計報告調整法(昭和27年法律第148号)第4条第1項に基づく承認統計調査として実施した。
調査の対象
農業経営統計調査(農業経営動向統計)における調査対象農家及び林家経済調査における調査対象林家のうち「農林統計に用いる地域区分」の「中間農業地域」及び「山間農業地域」に所在する農家及び林家を対象とした。
なお、農家については、1995年農業センサス結果を基に標本選定された経営耕地面積30a以上又は年間農産物販売金額50万円以上の販売がある農家、林家については、1990年世界農林業センサス及び1995年農業センサス結果を基に標本選定された保有山林面積20ha以上500ha未満の林家を対象としている。

抽出(選定)方法
農業経営統計調査(農業経営動向統計)における調査対象農家及び林家経済調査における調査対象林家のうち「農林統計に用いる地域区分」の「中間農業地域」及び「山間農業地域」に所在する農家及び林家を対象としており、調査農家及び調査林家の抽出方法は以下のとおり。
1. 農業経営統計調査(農業経営動向統計)の調査農家の抽出方法
(1) 母集団の設定
農業経営統計調査のうち農業経営動向統計における母集団は、1995年農業センサスの農家のうち、次のいずれかに該当するものとした。
ア 経営耕地面積が都府県の区域内にあるものは0.1ha以上、北海道の区域内にあるものは0.3ha以上の農家。
イ 経営耕地面積がアの要件を満たさないもののうち、過去1年間の農産物販売金額が15万円以上の農家。
(2) 調査農家の選定
母集団を下記により部分母集団に分け、部分母集団ごとに層化任意抽出法により調査農家を選定した。
ア 部分母集団の設定
母集団を販売農家と自給的農家に分けた後、都道府県別に区分した。販売農家については、更に農産物販売金額中第1位の作目によって経営部門別に区分した。

イ 販売農家の抽出
(ア) 抽出階層の編成
部門ごとの部分母集団の農家を部門規模の大きいものから順に配列し、部門規模階層ごとにその集団に属する農家数に抽出率を乗じて得た数で等分して、農家抽出階層を編成した。
(イ) 調査農家の抽出
農家抽出階層から、1戸ずつ任意抽出法により抽出して調査農家とした。なお、抽出された農家が調査困難な場合は、同一抽出階層の農家から再抽出して調査農家とした。
2. 林家経済調査の調査林家の抽出方法
(1) 母集団の設定等
母集団は、1990年世界農林業センサスで把握された非農家林家及び1995年農業センサスで把握された農家林家のうち、保有山林面積20ha以上500ha未満の林家(45,101戸)を母集団とし、母集団の分布状況に基づいて調査林家数(560戸)を定めた。
注:1 農家林家とは、林家(保有山林面積が10a以上ある世帯)のうち、農家(経営耕地面積が10a以上又は調査期日前1年間における農業生産物の販売金額が15万円以上ある世帯)である世帯をいう。
2 非農家林家とは、林家のうち、農家以外の世帯をいう。
(2) 調査林家の選定
調査林家の抽出は、市区町村を第1次抽出単位、林家を第2次抽出単位とする層別確立比例二段階抽出法により調査林家を選定した。
調査事項
農業経営統計調査(農業経営動向統計)及び林家経済調査における調査項目の他に、それぞれの調査で不足している以下の農林業の収支等に関する項目を承認統計調査により補足調査した。
1. 農家及び林家共通事項
農林産加工品等事業、農林業体験施設等事業、その他の事業及び雇われ兼業等の労働投下日数
2. 農家の調査事項
(1) 林業及びしいたけ生産の労働投下日数
(2) 林産物の生産概況
(3) 林業の労働投下日数
3. 林家の調査事項
(1) 農業の労働投下日数
(2) 土地面積のうち、経営耕地面積
(3) 農機具等機械類のうち、トラクター及び貨物自動車
(4) 農産物の生産概況のうち水稲及び肉用牛の生産概況
(5) 年金・被贈等収入、租税公課諸負担及び家計費
調査の時期
農家については1月から12月まで(暦年)、林家については4月から3月まで(年度)の1年間とした。
調査の方法
調査は、農林水産省-地方統計組織の系統で、農家及び林家の記帳調査並びに職員の面接調査により実施した。
集計・推計方法
1. 調査結果の取りまとめ方法
調査結果は、「農林家」のほか、「農家」「農家林家」及び「非農家林家」について、それぞれ1戸当たり平均値(注)を算出した。
また、「農林家」については、「中間農業地域の農林家」「山間農業地域の農林家」別にも取りまとめた。
なお、本調査における「農林家」とは、「農林統計に用いる地域区分」の「中間農業地域」及び「山間農業地域」に所在する販売農家(経営耕地面積30a以上または農産物販売金額50万円以上の農家。以下同じ。)及び保有山林面積20ha以上の林家をいい、保有山林面積規模に応じて「農家」、「農家林家」、「非農家林家」に区分した。定義は以下のとおりである。
(1) 農家:保有山林面積20ha未満の販売農家
(2) 農家林家:保有山林面積20ha以上の販売農家
(3) 非農家林家:保有山林面積20ha以上の非販売農家(経営耕地面積30a未満で農産物販売金額が50万円未満の農家)
(注)「農林家」の平均値は、調査対象を「農家」、「農家林家」及び「非農家林家」に性格分類し、1990年世界農林業センサス及び1995年農業センサス結果を基に、それぞれの分類ごとの世帯数ウエイトを用いた加重平均により算出した。
2. 統計表の編成
(1) 全国統計表
全国平均の農林家経営動向を編成表示した。
(2) 全国農業地域別統計表
農林家経営動向を全国、都府県、全国農業地域別に編成表示した。
なお、全国農業地域別は、統計部で統一して用いる地域区分のうち、沖縄を除く9農業地域を表示した。
全国農業地域の区分
|
全国農業地域名 |
所属都道府県名 |
|---|---|
| 北海道 | 北海道 |
| 東北 | 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島 |
| 北陸 | 新潟、富山、石川、福井 |
| 関東・東山 | 茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野 |
| 東海 | 岐阜、静岡、愛知、三重 |
| 近畿 | 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 |
| 中国 | 鳥取、島根、岡山、広島、山口 |
| 四国 | 徳島、香川、愛媛、高知 |
| 九州 | 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島 |
(3) 経営耕地規模別・保有山林面積規模別統計表
農林家経営動向(全国)を、農家及び農家林家は経営耕地規模別に、非農家林家は保有山林面積規模別に編成表示した。
なお、経営耕地規模・保有山林面積規模の区分は、次のとおりとした。
経営耕地規模・保有山林面積規模の区分
|
農家、農家林家
|
平均
|
0.5ha未満
|
0.5~1.0
|
1.0~1.5
|
1.5~2.0
|
2.0~3.0
|
3.0~5.0
|
5.0~7.0
|
7.0~10.0
|
10.0ha以上
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
非農家林家
|
平均
|
20~50ha
|
50~100
|
100~500
|
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用語の解説
1. 農林家経済の総括
主要指標は次のとおりである
(1) 総所得=事業所得+雇われ兼業等所得+年金・被贈等の収入
(2) 事業所得=農業所得+林業所得+農林産加工品等事業の所得+農林業体験施設等事業所得+その他の事業所得
(3) 農林業所得=農業所得+林業所得
(4) 農業所得=農業収入-農業支出
(5) 林業所得=林業収入-林業支出
(6) 農林産加工品等事業の所得=農林産加工品等事業収入-農林産加工品等事業支出
(7) 農林業体験施設等事業所得=農林業体験施設等事業収入-農林業体験施設等事業支出
(8) その他の事業所得=その他の事業収入-その他の事業支出
(9) 雇われ兼業等所得=雇われ兼業等の収入-その他の支出
(10) 年金・被贈等の収入
交際上のもらい物である祝金・香典などの被贈収入、恩給、年金、退職金、補助金などである。
(11) 租税公課諸負担
農林家に賦課された国税、都道府県税及び市町村税の賦課額並びに農業共済組合負担、社会保険負担などの公課諸負担の賦課額である。
(12) 可処分所得=総所得一租税公課諸負担
(13) 家計費
農林家の世帯員が生活を維持するために要した費用で、現金、現物外部取引価額、生産現物家計消費額並びに建物及び自動車等の減価償却費(家計費負担分)の合計額である。
(14) 経済余剰=可処分所得-家計費
2. 主要固定資産の状況
調査年始めに農林家が所有している土地面積と主な農機具等機械類の所有台数を表示した。このうち、土地は、経営耕地面積(田畑及び牧草地)と山林面積(人工林と天然林)、主な農機具等機械類はトラクター、貨物自動車、林内運搬車を表示した。
3. 主要農林産物の生産状況
農業及び林業の生産規模として、農産物のうち水稲(作付面積、生産量)と肉用牛(年始め飼養頭数、販売頭数)、並びに林産物(立木販売量、素材生生産量、しいたけ生産量(生・乾燥))を表示した。
4. 世帯員数及び就業者
年(度)末の世帯員数と年間60日以上就業した者の就業者数を就業先別(農業、林業、農林産加工品等事業、農林業体験施設等事業、その他の事業、雇われ兼業等別)に表示した。ただし、就業者数は、農業と雇われ兼業など2つ以上の事業に60日以上従事している場合は、主として従事した就業先に区分した。
5. 労働投下日数
労働日数(雇用を含む。)を就業先別に表示した。
6. 事業等収入
事業等の収入を農業収入、林業収入、農林産加工品等事業収入、農林業体験施設等事業収入、その他の事業収入及び雇われ兼業等の収入に大別し、その中を部門別に表示した。
(1) 農業収入
農業収入は、稲作、野菜、酪農などの農産物の販売収入、家計に仕向けられた農産物の価額のほか、農産物在庫の年(度)末在庫価額から年(度)始め在庫価額を差し引いた増価額なども含んでいる。
(2) 林業収入
林業収入は、林産物販売の現金収入のほか、林産物の林業外仕向額、林産物在庫の年度末在庫価額から年度始め在庫価額を差し引いた増価額を含めているが、育林(立木販売)等の部門別には現金収入のみとしたため、部門別の積み上げ値と林業収入は一致しない。
(3) 農林産加工品等事業の収入
農林産加工品等事業の収入を農産物加工品、林産物加工品に区分して表示した。
ア 農産物加工品
農産物加工品は、原料を他家から購入して自家で加工した農産物加工品の販売収入である。
イ 林産物加工品
林産物加工品は、自家で加工した林産物加工品の販売収入、製材業、家具加工品、木工品、漬物、佃煮などの販売収入である。
ウ その他
その他は、ア、イに該当しない収入である。
(4) 農林業体験施設等事業の収入
農林業体験施設等事業の収入を民宿収入、観光農園、その他の収入に区分して表示した。
ア 民宿収入
民宿収入は、民宿、貸別荘・ロッジ、レストランなどの施設(部屋代、食事代)の収入である。
イ 観光農園
観光農園は、くだもの狩り、いちご狩りなどの観光農園で専従の労働者を雇用している場合や貸し農園、ふれあい農園、キャンプ場などの入場料金、販売収入である。
ウ その他
その他は、ア、イに該当しない収入である。
(5) その他事業の収入
商店、建設業、製造業等の商工鉱業の収入と農林産加工品等事業の収入に含まれない水産加工等のその他の収入とに区分して表示した。
(6) 雇われ兼業の収入
農業、林業に雇われた農林業等の収入と会社、商店等へ雇われたその他の収入に区分して表示した。
7. 事業等支出
事業等の支出を農業支出、林業支出、農林産加工品等事業支出、農林業体験施設等事業支出、その他の事業支出及び雇われ兼業等の支出に大別し、そのうち農業支出、林業支出については費目別に表示した。
(1) 農業支出
農業支出は、費目別に農業現金支出、現物外部取引価額、年(度)始め農業生産資材在庫価額、減価償却費を加算した合計額から、年(度)末農業生産資材在庫増減額を差し引いたものである。
(2) 林業支出
林業支出は、費目別に林業現金支出、林業生産資材の年度始め在庫価額から年度末在庫価額を差し引いた在庫減少額の合計を表示した。ただし、減価償却費については各費目に含め、林業用償却資産の償却額の合計を別途表示した。
(3) 農林産加工品等事業支出
農産物加工品、林産物加工品等の事業に係る支出を表示した。
(4) 農林業体験施設等事業の支出
民宿収入、観光農園等の事業に係る支出を表示した。
(5) その他事業支出
商店、建設業、製造業等の事業の維持・運営に係る支出を表示した。
(6) その他の支出
上記並びに租税公課諸負担及び家計費に属さない支出を表示した。
利用上の注意
1. 1 戸当たり平均値は、各々の調査対象全体の平均値であり、調査項目のなかには、農林業以外の事業(農林産加工品等事業や農林業体験施設等事業等)等のように少数の調査対象にしか出現のない項目もあるため、利用に当たっては十分留意されたい。
2. 収支の取りまとめ期間は、農家(農業経営統計調査(農業経営動向統計))は暦年(1月~12月)で、林家(林家経済調査)は年度(4月~翌年3月)であるが、本書では「年」で表した。
3. 統計表に使用した記号は、次のとおりである。
「△」は、負数又は減少したもの
「-」は、事実のないもの
「…」は、事実不詳又は調査を欠くもの
利活用事例
中山間地域振興に係る各種施策の企画・立案のための資料。
お問合せ先
大臣官房統計部経営・構造統計課
担当者:営農類型別経営統計班
代表:03-3502-8111(内線3636)
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