作成日：平成29年3月31日

出荷前後のブロイラー鶏群のサルモネラ保有状況と、製造された鶏肉のサルモネラ汚染状況調査

2.1.2.2. 肉用鶏農場

2.1.2.2.6. 出荷前後のブロイラー鶏群のサルモネラ保有状況と、製造された鶏肉の菌汚染状況調査（平成24年度）

次のことを把握するために、ブロイラーを生産する7農場において計25鶏群の新鮮盲腸便と、出荷先の食鳥処理場2か所において同じ25鶏群の盲腸内容物及び鶏肉を対象に、サルモネラの調査を行いました。

出荷1週間前と食鳥処理日では、鶏群のサルモネラ検査の結果は一致するのかどうか。
サルモネラ陽性鶏群からサルモネラ汚染鶏肉が製造されるのかどうか。

その結果、出荷1週間前は25鶏群のうち19鶏群がサルモネラ陽性でした。食鳥処理日は、出荷1週間前にサルモネラ陽性だった19鶏群のほか3鶏群がサルモネラ陽性でした。したがって、出荷1週間前と食鳥処理日のサルモネラ検査結果の一致率は88％（22/25）でした。
また、食鳥処理日にサルモネラ陽性であった22鶏群から製造された鶏肉のサルモネラ陽性率は69％で、サルモネラ陰性だった3鶏群から製造された鶏肉のサルモネラ陽性率は17％でした。

(1) 目的

出荷1週間前と食鳥処理日では、ブロイラー鶏群のサルモネラ検査の結果は一致するのかどうか、また、サルモネラ陽性鶏群からサルモネラ汚染鶏肉が製造されるのかどうかを把握する²¹。

21 「出荷前後のブロイラー鶏群のカンピロバクター保有状況と、製造された鶏肉のカンピロバクター汚染状況調査」（2.1.1.2.7）と併せて実施。

(2) 試料採取

平成24年8～12月に、ブロイラーを生産する7農場において、計25鶏群（食鳥処理日に、1番目に処理される予定の鶏群）の新鮮盲腸便を鶏舎内の床の5か所から（1鶏群につき試料5点）採取しました。試料の採取は、鶏群が出荷される1週間前に行いました。

また、出荷先である食鳥処理場2か所において、同じ25鶏群を対象に、各鶏群から、中抜き工程において20羽分の盲腸内容物（1鶏群につき4羽分をプールした試料5点）、解体・包装後に鶏肉（ムネ肉、肝臓）を5袋ずつ（1鶏群につき試料10点）採取しました。

(3) 微生物試験

新鮮盲腸便、盲腸内容物、鶏肉を試料としてサルモネラの定性試験（3.2.1.1(11)、3.2.1.5(2)）を行いました。新鮮盲腸便5点または盲腸内容物5点のうち1点でもサルモネラが分離された鶏群は、サルモネラ陽性（サルモネラ保有）と判定しました。分離されたサルモネラは、O抗原及びH抗原を調べて血清型を特定（3.2.3.1）しました。

(4) 結果

出荷1週間前では、調査対象の25鶏群のうち19鶏群がサルモネラ陽性でした。食鳥処理日では、出荷1週間前にサルモネラ陽性だった19鶏群に加え3鶏群がサルモネラ陽性になりました（表48）。したがって、出荷1週間前と食鳥処理日のサルモネラ検査結果の一致率は88％（22/25）でした。

表48：ブロイラー鶏群の出荷前後のサルモネラ保有状況（対象：25鶏群）

出荷1週間前の検査結果	食鳥処理日の検査結果
出荷1週間前の検査結果	カンピロバクター陽性	カンピロバクター陰性
サルモネラ陽性（19鶏群）	19鶏群	0鶏群
サルモネラ陰性（6鶏群）	3鶏群	3鶏群

サルモネラ陽性の22鶏群から製造された鶏肉のサルモネラ陽性率は69％（152/220）でした。部位別では、ムネ肉のサルモネラ陽性率が65％（71/110）、肝臓のサルモネラ陽性率が74％（81/110）でした。一方、サルモネラ陰性だった3鶏群から製造されたムネ肉及び肝臓のサルモネラ陽性率は、それぞれ7％（1/15）、27％（4/15）でした（表49）。今回の調査におけるサルモネラ汚染鶏肉の97％（151/156）が、サルモネラ陽性鶏群から製造された鶏肉でした。サルモネラ汚染鶏肉156点から分離された161株のサルモネラのうち151株は、2つの血清型（S. Infantis（91％、146/161）、S. Schwarzengrund（3％、5/161））に分類され、残りの10株は既知の血清型に分類できませんでした。

表49：鶏肉のサルモネラ汚染状況

鶏群	鶏肉	試料点数	陽性点数	陽性率（％）
サルモネラ陽性鶏群（22鶏群）	全体	220	151	69
	ムネ肉	110	71	65
	肝臓	110	81	74
サルモネラ陰性鶏群（3鶏群）	全体	30	5	17
	ムネ肉	15	1	7
	肝臓	15	4	27

まとめ

調査鶏群数は限られていますが、今回の調査では、出荷1週間前と食鳥処理日のサルモネラ検査結果の一致率は88％（22/25）でした。出荷1週間前の鶏群のサルモネラ検査結果が陰性であっても、食鳥処理日の検査結果がサルモネラ陽性に変わる場合があることがわかりました。

また、今回の調査では、サルモネラに汚染された鶏肉の97％（151/156）が、サルモネラ陽性鶏群から製造された鶏肉であり、過去の調査（2.1.2.2.1）と同様の結果でした。したがって、農場で鶏群のサルモネラの保有率を下げることによって、鶏肉の汚染率が下がり、食中毒の発生の減少につながると期待できます。

鶏肉の出荷直前も含め、飼養期間中は、サルモネラが農場に侵入して農場内の鶏群から鶏群に広がらないよう衛生対策に取り組む必要があると考えられました。

なお、分離されたサルモネラの血清型の多くは、サルモネラ食中毒事例で分離される血清型でした（ただし、2,500以上の血清型のうち、サルモネラ食中毒の原因として一番多い血清型S.Enteritidisは分離されませんでした。）。

調査結果（鶏肉－サルモネラ）トップへ

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者：危害要因情報班
代表：03-3502-8111（内線4457）
ダイヤルイン：03-6744-0490
FAX：03-3597-0329