議事録
平成:16年7月2日
会場:郵政公社会議室
時間:13:30~15時30分
議事次第
- 開会
- 農村振興局長あいさつ
- 議題
(1)中山間地域等直接支払制度の検証に関する論点(案)について
(2)その他 - 閉会
(午後1時30分開会)
中山間地域振興室長
それでは、まだ1時半になっておりませんけれども、そろそろ皆さんお集まりでございますので、中山間地域等総合対策検討会を始めさせていただきます。
私、進行の中山間地域振興室長の水間でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、第6回目の会合となります。本日付で事務局の人事異動がございましたので、ご紹介いたします。
まず、農村振興局長の川村です。それから、地域振興課長の大原です。
それでは座長、よろしくお願いいたします。
佐藤座長
それでは、第17回になりますが、中山間地域等総合対策検討会を開会いたします。
本日の会議は、いつものように2時間を予定しておりますので、3時半には終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
今日ご出席いただいている方は非常に少ないんですが、服部委員、松田委員、村田委員、守友委員、澤井委員及び清水委員の6名がご欠席でございます。それぞれ今日出席いただけなかった委員からも、後ほどまたご紹介があると思いますが、ご意見をいただいておりますので、それを参考に今日は検討に入りたいと思います。
既に第14回の議事録及び前回までの資料等々は、例のごとく農林水産省のホームページで公表されております。
それではまず初めに、農村振興局長よりごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
農村振興局長
農村振興局長になりました川村でございますが、本日付で異動がございまして、つい先程、辞令をいただいたところでございます。
先生方におかれましては、本当にこの検討に当たりましていろいろご配慮いただいておりますことに対しまして、改めて御礼申し上げたいと思います。
私もこの中山間の直接支払いの問題につきまして、実は6年ほど前にこの農村振興局の前身でございます構造改善局というところの総務課長をしておりまして、ちょうどその制度の制定に当たりまして、喧々諤々の議論をしているときに遭遇したといいますか、居合わせたものでございます。それからもう既に実行に移り、こういった評価を行う段階になっているのかということで、改めて感慨を新たにするところでございます。
この問題につきましては、私も経営局長が前身でございますけれども、国会法案審議の中でも何回も取り上げられまして、かつ財政審の報告もあったものですから、かなり熱心なご議論があったということを脇で聞いておりましたけれども、そういうことも見聞きをしております。現場を含めまして非常に関心の高い事業でございます。ぜひいろいろな観点からご議論をいただきたいなと思っております。
農林水産省全体といたしましては、今、基本計画の見直しということで農政全般にわたりましていろいろな検討をしております。所得政策の問題、あるいは担い手農地制度の問題、あるいは農業環境、資源保全政策といったような3本柱をまた今のところは中心に据えまして、この7月、それから8月初めにかけまして中間的な整理をすると。そして、早いものは来年度予算に反映していくといったようなことでの作業もしております。この問題も、この中山間の直接支払いの問題も深く関連する問題ではございますが、ぜひその辺の論点も念頭に置きながらご検討をいただきたいと思うところでございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
今日は異動があったということでこの後すぐ失礼をいたしまして、また挨拶回り等いたします。失礼をいたしますが、よろしくお願いしたいと思います。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
それでは、事務局の方から資料の確認をお願いいたします。
中山間地域振興室長
お手元にお配りしております、資料の3枚目に資料一覧というのがございます。
これに添ってご説明しますけれども、資料1としまして、横長の「中山間地域等直接支払制度の検証に関する論点(案)」というのがあります。
その次に、資料2としまして「検討会での指摘事項について」。これは前回の検討会で委員の方から質問があったものにつきましての資料であります。
それから続きまして参考資料として1、2、3、4とありますけれども、参考資料1が前回までの検討会の資料の抜粋。
それから参考資料2が「制度の検証に関する論点(案)についての意見・提案」ということで、前回の検討会以降にメールでお寄せいただいた意見をまとめております。
それから、参考資料の3と4につきましては、先に委員の皆様方に個別にご検討いただきまして、6月30日に公表させていただきました平成15年度の中山間地域等直接支払制度の実施状況、概要版と詳細版を配付しております。
以上です。
佐藤座長
資料はございますでしょうか。
それでは早速、議事に入りたいと思います。
本日も前回同様、現行対策の検証に関する論点についてということで、引き続きご意見を賜りたいと思っております。
なお、先程の局長のご挨拶もありましたが、平成17年度概算要求前まで取りまとめる必要があるということで、残る時間も少ないのですが、本日の検討に当たっては各論点について議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず事務局から現行対策の検証に関する論点について及び検討会での指摘事項についての説明をお願いいたします。
中山間地域振興室長
ご説明いたします。まず、資料1からであります。ちょっと時間が ございませんので、駆け足になることをご了承ください。
資料1のペーパーは、前回の検討会の一番最後で議論しましたペーパーを土台にしまして、前回において委員の方々、それから関係団体から出されたご意見、さらにその後、メールで送付いただいた、参考資料2にまとめておりますけれども、ご意見を踏まえ、追加いたしまして取りまとめたものでございます。この論点(案)につきまして議論をいただく前に、確認の意味も含めまして簡単に内容のご説明をしたいと思います。
まず、論点項目の1番、中山間地域等の位置づけと状況についてでありますけれども、真ん中にありますように中山間地域等は国土面積とか耕地面積、総農家数、農業産出額において全国との比較で大きな割合を占めているということ、あるいは内閣府の行った世論調査によれば、農業・農村の食料生産供給以外の役割について、自然環境の保全とかあるいは国土の保全というものについて約6割の人が認識されているということ等々があります。そのことから判断して、右の留意点にありますように、本制度発足後、中山間地域等の食料供給機能、多面的機能に対する国民の期待は変化しているのかどうか、強まっているのかどうかについてどう考えるかという論点であります。
また、零細規模の農業構造とか労働・土地・資本の各生産性の低さ、あるいは高齢化の進展、農業所得や例えば汚水処理施設普及率のどれをとってみても全国、あるいは平地と比べて不利な状況にあるということから、右にありますように本制度発足後、中山間地域等の自然的・経済的・社会的条件の不利性は変化しているのかどうか、依然として不利であるのかどうかという点であります。
それから左側のB.、制度の検証のところであります。
1番として制度の実施状況でありますが、66万2千haの農用地において、3万4千の協定が締結されている。ここで中山間地域等において適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業の生産条件に関する不利を補正するための支援等により、多面的機能の確保を図るための施策としての評価をすることが必要であるという点です。
次に、2ページ目にいきます。
2番の制度の目的と効果ということで、最終的には次の3点、日常的営農活動の継続とそれによる多面的機能の増進、それから積極的活動による多面的機能の増進、将来に向けた営農継続のための取り組み、これら3点について検証すべきであるとの意見が委員から出されております。
それから、制度の導入の際の目標が概して定性的なものにとどまっていて、定量的、数量的なものが必ずしも十分に明らかにされていないため、事後的な評価が非常に難しいという意見も関係団体から出されております。
それから、3ページ目であります。
制度の効果として4つほどにまとめてありますが、その1番、耕作放棄の発生防止につきましては、96%の集落で農地法面や水路・農道等の管理活動が活発という回答が寄せられている。
それから3つ飛びまして上から5つ目の段落でありますが、これに対して耕作放棄地の減少が本当にこの制度によるものなのかどうか、あるいは他の代替策と比べて費用対効果はどうなのかといった点について、必ずしも十分納得できるような資料がないという意見が関係団体から出ております。
これに対しまして、本制度はわずかなお金で大きな効果を上げているという評価をすべきではないかとか、耕作放棄の防止という観点からすれば対象地域内では確かに効果が上がっており、定量的にも確認できる。あるいは、ステップアップやシステム変化が見られなくても、耕作放棄は抑えられているのであり、そこを評価すべきであるというような意見が委員から出されております。
それから、留意点の右上の方に書いてあります、制度の実施についてどのような確認行為がなされているかという留意点につきましては、集落協定によって適切な農業生産活動が行われているかどうかにつきまして、毎年、全国の実施市町村が現地を見回って確認しているということで担保されているんではないかと考えております。
次に、4ページ目にいきまして、2番目の効果としまして、多面的機能の増進があります。
景観作物の植栽、棚田を活用した都市住民との交流活動等多様な取り組みが実施されている。その中で、その取り組みをつぶさに見ていきますと、国土保全の取り組みが約7割、保健休養機能を高める役割が約4割、自然生態系の保全に資する取り組みが約2割ということで、取り組みに若干の偏りが見られるではないか。中山間地域における多面的機能の効果をより発揮するための工夫を考える必要があるという意見も委員から出されております。
論点につきましては、多面的機能の増進をどう評価するかというところが論点であります。
それから3番目に将来に向けた農業生産活動等の継続的な実施ということでありまして、卒業という理由で交付金の交付を終了した協定はないと述べてありますが、自立的かつ継続的な実施が可能となる状況には至っていないとか、担い手の定着等の効果発現のためには、中長期的な取り組みが必要ではないかというような評価が県の方から上がってきております。
この点につきましては、右にありますように中山間地域等の条件不利性や過疎化・高齢化の進展等も考慮した場合、自律的に農業生産活動を継続できる状況となっているかどうか。これはすなわち、本制度からの卒業を意味するものでありますけれども、こういうふうに評価できるのだろうか、あるいはそうした状況が促されてきたと評価できるのかどうかという点であります。
留意点の下にいきますけれども、相対として生産性・収益の向上、担い手の定着化に向けた取組の活発化により、将来に向けた農業生産活動等の継続のための集落のステップアップが見られてきているけれども、一部集落では取組が停滞するということをどう評価するかということでございます。
次のページ、5ページ目にいきまして、真ん中の欄の上から5つ目でありますけれども、共同取り組みの質の向上を図るためには、自律的かつ具体的な活動目標の策定が必要であるという評価が県から上がってきております。
右にいきまして、例えば集落内の農地等を今後どういうふうに守っていくかといった集落の将来像とかその実現を図るための具体的な活動等に関して、集落の合意形成とその明確化、例えば集落マスタープランの策定というようなものかもしれませんけれども、これを図るような取り組みの必要性をどう評価するか。
それからプール金、すなわち交付金の共同取り組み活動への配分分についてどう評価するかという問題があります。プール金の使途は、あくまでも本制度の趣旨に沿って農業生産活動、地域資源管理活動の将来展望のある担い手システム創出を重視することが基本であるという意見が委員から出されております。
さらに別の論点としまして、規模が大きな協定ほど受委託面積が大きい、あるいは集落営農組織の育成が活発であるというような結果が分かってきておりますし、集落を越えた広範囲での取り組みの推進が必要であるという評価が県から上がってきております。協定面積規模が大きくなるほど集落協定活動が活発化している状況をどう評価するかという点であります。
それから、6ページ目であります。
4番目の効果としまして、集落機能の活性化についてでありますが、これについては多くのご意見が出されました。
真ん中の欄の下から2つ目の段落にありますように、本制度は農地、農業資源の保全という地域農業全体の共通の課題の解決にみずからが取り組むことを促すことで、地域の主体性を高めてさまざまな地域活動の活性化につながっているという意見が関係団体からありました。
留意点の上の方でありますが、集落機能の発揮を土台として農業生産活動等の継続を通じた多面的機能の確保を図ることをねらいとする本制度の仕組みをどう評価するか、あるいは集落活動の活発化、若者や女性の参加等による集落機能の回復・向上をどう評価するかという点であります。
それから次のページの留意点の一番上でありますが、集落協定は非農家等の参加、それから都市住民等の地域外からの支援活動を排除しない仕組みとなっているが、これは集落活動の活発化等に寄与したと評価されるのか。
さらに1つ飛びまして、集落機能の活性化等の地域政策的効果について、本制度の成果としてどう評価するか。これについてはかなりのご意見をいただいておりまして、真ん中の欄の下から3つ目にありますように、集落機能の活性化というのは、本制度から見れば一種の副次的効果にすぎないので、この視点からの評価は制度の目的からずれている。副次的な効果として一括して把握することが可能という意見のほか、耕作放棄の防止という目的に直接かかわらない集落機能の強化という構造改革上の問題が大きく加わってきた。実際には集落機能の強化が図られてきたので、評価においてもそれを外すべきではないというような意見が委員から出されてきております。
次に8ページ目にいきまして、これに対しまして、集落機能の活性化等については、本制度だけで対応できるとは思えない。中山間地域の交付金制度としては、目的や効果などを思い切って限定する議論をしないとうまくいかないのではないかという意見、あるいは集落機能の活性化については、農業生産活動の継続的な実施と相関する事象としてとらえるべきであり、B.-2-(3)、これは将来に向けた農業生産活動等の継続的な実施の項目でありますが、この中に下位項目として位置づけてみてはどうかというような意見が出されております。
それから、5番目の個別協定につきましては、締結件数は少ないものの、集落協定の締結が困難な地域における補完的な役割等が見られるが、個別協定の意義をどう評価するかという点であります。
それから、9ページ目であります。9ページ目以降は制度の基本的な枠組みということで、まず(1)としまして対象地域につきましては、留意点にありますように、対象地域は地域振興立法8法の指定地域に加えて、一定のガイドラインを踏まえ、都道府県知事の裁量により、それ以外の条件不利地域も指定できることとなっている。これは本制度の基本的考え方の一つであります地方裁量主義を反映したものでありますけれども、これをどう評価するか。
真ん中の欄の上から3つ目でありますが、農村政策や環境農政における地方への裁量権拡大はEUでも見られるが、本制度においても評価し得るのではないかという意見が委員から出されております。
続きまして、(2)の対象農用地であります。
右の留意点のところですが、1haの団地要件を弾力的に運用する「営農上の一体性」の適用状況は地域によってばらつきが見られるが、こうした運用実態または仕組みをどう評価するか。これにつきまして若干補足いたしますと、前回の検討会でご紹介いたしましたように、都道府県や各団体から要望がいろいろ上がってきているわけでありますが、その中でも1haの団地要件が厳しいという指摘がよくあるわけでありまして、これにつきましては団地要件に関します営農上の一体性という弾力措置を有効に使っているかどうかという状況が都道府県の間でばらつきがあるということをどう見るかという点であると思います。
10ページ目にいきます。
別の論点としまして、真ん中の欄の上から3つ目でありますが、平場を対象にすると制度設計に反するが、営農上の一体性を有する平地農地は含めてもよいのではないかという意見。あるいは、農振白地の中での耕作放棄地の拡大、存在をどう考えるかという意見。
これに対応する意見としまして、平場の議論や農振白地地域の耕作放棄の議論を持ち込むと、我が国の全体的な農地保全施策との議論とごちゃごちゃになってしまうというような意見も委員から寄せられております。
これは右にありますように、非対象農用地の保全管理のあり方をどう考えるかという問題でありまして、これにつきましても若干補足いたしますと、本制度の基本的な考え方は、平坦地との条件不利の格差を補正するために傾斜地等の農用地を対象として実施しているものであること、あるいは平坦地を含めます農地等の資源保全施策につきましては、現在、食料・農業・農村政策審議会において新たな基本計画の検討の中で議論されていることを踏まえる必要があるのではないかと思っております。
それから11ページ目にいきまして、(3)の協定期間であります。右の留意点にありますように、農業生産活動等を5年以上継続することを要件としていることをどう評価するのか。
それから(4)の交付の仕組みについてでありますが、直接支払いであるので、一旦は個人に交付されるべきであるが、現行では集落に交付された後に共同取組活動分を除いて残りを個人に支払う仕組みとなっている。これは原則的な問題として検討する必要があるというような委員の意見。交付金が集落代表者に支払われるという仕組みをどう評価するかという点であります。
それから、留意点の上から3つ目の○ですけれども、集落協定に係る交付金の半分以上を共同取組活動に活用すべきとした仕組みは、地域の創意工夫や集落機能の回復・向上にどのような効果を及ぼしたと評価するのか。
左にいきまして、これにつきましては共同取組活動への配分割合が2分の1以上の集落協定は77%を占めております。個人への配分があってもよいが、配分割合は2分の1でよいという意見が委員からありますし、さらに、個人活動が中心で各種の共同取組活動に消極的な協定があるために共同取組活動の比率を高めるべきであるという評価も県から上がってきております。
それから(5)の交付金の遡及返還につきましては、農業後継者用住宅への転用は、定住促進等の観点から公共事業の収用に準じた取り組みが必要であるという評価が県から上がってきています。このような要望も含めて、交付金の遡及返還義務のあり方をどう考えるかという点であります。
それから最後の12ページ目でありますが、(6)その他としまして、留意点にありますように明確かつ客観的な基準のもとで透明性を確保しつつ、地域の特性に配慮した制度の運営を図る上で、ほかにどのような点に留意すべきか。
あるいは、真ん中の欄の限界的集落に対して、協定締結を推進しても手が上がらないという現状が明らかになったのではないか。また、このような集落は活力のある集落と連携させるべきではないかという意見。
1つ飛びまして、限界的農地については森林に返す等がよい場合もあり、地域が最善の選択をできるような仕組みになっているのかというような意見も関係団体の方から上がってきております。これにつきましては、限界的集落の維持に対する本制度の効果をどう評価するかという点であります。
それから最後に4番の他の政策との整合性という点で、食料・農業・農村基本計画の見直しに係る他の政策との整合性、あるいはほかの中山間地域対策との関連をどう評価するのか、他の中山間対策との関連状況を踏まえ、本制度の有用性をや他の対策との連携のあり方等をどう考えるかという点であります。
かなり駆け足で恐縮でありますが、資料1の説明を終わりまして、引き続きまして資料2につきましては、前回の検討会において委員の方から、もう少し地域別の検証を行うのではないかとの意見が出されたのを受けまして、資料として作成したものであります。このうち一部につきましては、既にこれまでの検証資料として出したものを再掲したものであります。
順に簡単に見ていきますと、1ページ目以降でありますが、1番の集落協定の地目別取り組み状況、それから2ページ目、協定に基づく活動の状況として、農業生産活動の取り組み状況、3ページ目、多面的機能の増進の取り組み、4ページ目、生産性の向上や担い手の定着の取り組みとして、生産性・収益の向上、5ページ目が担い手の定着の取り組み、ここまでは既にこれまでお示しした資料の一部であります。
それから6ページ目以降は、全国の結果を示しておりましたが、今回新たにブロック別のデータも出してみたということであります。
まず、集落機能の活発化、集落内の話し合いの変化ということでブロック別の結果が出ております。
また、7ページ目が水路・農道等の管理状況の変化、それから8ページ目に多面的機能の増進活動に対する取り組み変化としまして、多面的機能の3つの選択肢の国土保全の取り組み、保健休養機能の取り組み、自然生態系の取り組み、それぞれについてブロック別に出してみたということであります。
それから、9ページ目の生産性・収益の向上ということで、農業機械や施設の共同利用、あるいは集落内での高付加価値型農業等の取り組み、農作業の受委託面積割合の変化をブロック別に分析してみました。
それから10ページ目、担い手の定着を目標とした取り組みの変化ということで、認定農業者、農業生産法人等の育成、それから新規就農者の参入状況、あるいは利用権設定面積割合の変化ということ。
それから、11ページ目が集落営農組織の育成の取り組みによる変化についても出ております。
12ページ目、集落の農業生産活動に関する体制の変化ということで、取り組みの内容を3つのシステムに分けて、意思決定のシステム、地域資源管理システム、営農システムという3つに切り分けて変化を見てみたということで、ブロック別に見ております。
それから、13ページ目が集落農業生産活動の継続に向けたステップアップの状況ということで、これも一回出している資料でありますが、3万1千0強の全集落協定について左下にありますような問いに対して答えを出していただきまして、いろいろな水路・農道の共同作業とか機械・施設の共同利用とか利用調整、あるいは集落営農とか法人化、さまざまな観点から集落の体力というようなものを7つに絞ってお聞きしまして、それぞれ答えにイエスがついていれば1点、ノーであれば0点ということで単純集計をして一つのステップアップの条件を見てみたというものであります。締結前と締結後を比べますと、例えば締結前、0点と書いてありますが、0点といっても5年間の農業活動の継続という最低の義務を果たした上でのプラス・アルファがないという意味での0点でありますが、協定締結前は全協定の半分弱が0点だったものが、協定締結後には3%と激減している。それに加えまして、全体的に分布の状況が点数の高い方に動いているという意味で、着実なステップアップが図られているのではないかととらえております。
次の14ページ目はこれをブロック別に見たものでありまして、全国の締結前、締結後の動きと大体似通っておりますが、例えば北海道、沖縄もそうかもしれませんけれども、そのステップアップの状況がより高く移行しているのではないかと考えております。
それから最後の15ページでありますが、これも既に出している資料でありますけれども、集落協定の概要ということで、全国及びブロック別に1協定当たりの平均の参加者数とか締結面積、交付金額等々についてもう一回載せております。
以上が資料の説明であります。よろしくお願いします。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ただいまの資料のご説明について、ひとまずご質問があったらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
特にございませんようでしたら、次の議題に移りたいと思います。よろしいですか。
それでは論点、資料1にいろいろ整理されておりますが、これについて少し議論を深めたいと思います。
進め方ですが、4つに分けて議論をしてみたいと思います。
まず1つは、A.とB.の1、制度全体にかかわるところについてご意見をいただきたいと思います。
それから、それが終わった段階で2ページ目の2の制度の目的と効果の中の(1)及び(2)についてご議論いただく。
それが終わった後で(3)、それから(4)、そして(5)個別協定まで。
最後に、3、制度の基本的な枠組み、全体を通してご議論をいただくというふうにしたいと思いますので、まずA.及びB.の1、制度の実施状況までについてご議論をお願いいたします。
ここの部分については今までも随分いろいろなご意見いただき、そして留意点にもあるように、ほぼ方向性が固まっているようにも思えますが、特に何かございますか。
小田切委員
この留意点にございますように中山間地域の自然的・経済的・社会的、この不利性はいずれも好転していない、あるいはむしろ悪化しているというふうに考えることができるんだろうと思います。
それに加えて、恐らくそれは社会的条件に含まれると思いますが、昨今の市町村合併の動きをここで指摘してみたいと思います。市町村合併は、ご存じのように地方制度調査会でも人口1万未満に、ある種のターゲットを絞ってそれが進行しているわけでございますが、この人口1万未満の市町村、全国に約1,500市町村ございますが、実はこの85~86%がいわゆる条件不利地域でございます。過疎法、山振法等々の本制度とも重なる条件不利地域でございまして、すなわち現在、市町村合併のある種の対象とされている、あるいはターゲットとして絞られている地域は、その多くが直接支払の制度の対象地域と重なっている。当然こういう中で市町村合併が進む中で、とりわけ都市的地域と中山間地域が合併するような大合併の場合にはさまざまな措置が講じられているものの、残念ながらそれが中山間地域の地域振興を従来と同じように進めるような条件にはなっていないということだろうと思います。
この点につきましては、新潟県の現地調査においても安塚町の助役さんからご指摘がございました。その点についてやはりこの場でも確認する必要があるのではないか、そのように思います。
以上でございます。
佐藤座長
ありがとうございました。重要な指摘をいただきました。
ほかにいかがでしょうか。
柏委員
単純な質問なんですけれども、自然的条件の不利性が変化しているかどうかと、これはどういう意味ですか。これは要するに、交付金で自力田直しか簡易な整備か、こうした何かをやって土地改良が少し進捗したというようなことを言っているんでしょうか。どういう。
中山間地域振興室長
これは余り他意はないんですけれども、要するに3つの観点から条件不利性と、制度が発足したときも書いてあったものですから一応確認の意味で書いたわけであります。自然的条件は中山間地域において変化するというのはなかなかちょっと、土地の条件が急傾斜が多くて不利性があるということは制度当初あったことを確認しているわけですけれども、それがなかなか5年間で変化するということは想像できないので、一応確認の意味で並びで書いたという程度の意識ではあります。
柏委員
ちょっとよくわからないですね。
佐藤座長
ここは自然条件が人工的に改良されてという意味ではなく、むしろ後半の経済的・社会的条件がきちんと……
中山間地域振興室長
どういうふうにしているのか、その辺が中心。
柏委員
それであるならば、消した方がいいんじゃないですか。
佐藤座長
どうぞ。
小田切委員
今の自然的条件なんですが、柏委員がおっしゃっていたように、条件不利性の補てんと同時に改善という視点もこの制度の中には可能性としてはあり得ると思っております。
私どもが現地視察に参加させていただきました新潟県の松代町では、特に交付金をプールして農道整備をすることによって、機械導入の条件をつくっていくということがございます。そういう意味では自然的条件の、もちろん抜本的な改善ではございませんが、改善が行われていると考えることができます。ただ、残念ながらそれが全面的あるいは抜本的に行われているかというと、交付金の額はそこまでいっていないということでございます。
このように、自然的条件の改善に向けて集落のプール金を使っている現実もあるわけでございますから、そういう意味では一つの改善に向けての目標として、消さずに設定しておいていいんだろうと思います。
柏委員
ですから農道整備を含めた何らかの土地改良という意味に限定して、そうした意味における自然条件の変化というふうに位置づけていけばわかりやすいと思います。先程の説明では、そうではないというふうに言われましたけれども。
佐藤座長
ここは、制度が対象としている中山間地域等の位置づけとして、当初制度が想定したような状況が改善されているのかどうなのかということを問うているということです。だから制度が前提としている中山間地域がなくなってしまったら制度自体も不要ということになると思うんですが。
計画部長
あえて言えば、これは条件不利地域の対象8法という法律の対象地域を状況認識の対象地域にしていますが、それぞれの法律で条件がありますね。例えば離島は橋が通れば離島ではなくなるとかそういう話もありますが、あえて言えばそういうことが起こり、全部の離島に橋が通ればひょっとしたら従来の離島振興法的離島はなくなるのかもしれない。あえて言えばそんなことですかね。
ただ、ここはそういう面では個別の圃場の条件というよりは、置かれている地域の条件不利性をこの3つの観点から示していると。それを私どもの制度では8法というものをこういうものの対象地域だろうというもともとのとらえ方はしているということだろうと思います。
佐藤座長
よろしいですか。
制度の実施状況はいかがですか。平成15年度の実施状況という資料もいただきましたが、これは特にご意見はございませんか。
特になければ次の2番目の議論に移りたいんですが、よろしいですか。
それでは、次の2ページ目から4ページ目の(2)多面的機能の増進というところまでについてご議論いただきたいと思います。よろしくお願いします。
書面でご意見をいただいている委員がいらしたら、補足的にもし必要ならご説明をいただいても結構でございます。よろしくお願いします。
野中特別委員
よろしゅうございますか、1点。
ささいな点で1つはあれなんですけれども、2ページの「最終的に検証すべき論点は」というところで3つ掲げられておりますけれども、例の基本法の定義、規定からすると、前のページにもありましたように適切な農業生産活動が継続的に行われるように何とかの支援をすること等により多面的機能を特に確保するとなっているわけですので、一応並べ方としては1で通常の営農活動があり、それがまた将来に継続するような動向という3が来て、最後に総合的に今多面的機能の確保が図られるかどうかというのが法律的には論理的にはそうなっているんではないかということなんです。これは単なる順序なんですけれども。
問題は、その次の定量的、数量的に明らかにすべきではないかというこの点なんです。これは前、経済団体の方からこういう強いご意見があったと思うんでございますけれども、最近は私どもの例えば独立行政法人なんかもそうなんですけれども、かなり施策について数量的にといいますか、定量的にできるだけ明らかにしろというのが国のあらゆる施策の方で求められていることだと思うんです。したがいまして、今回の検証に当たりましても、ここはできるだけやった方がいいんじゃないかと思うんです。
そういう意味では、例えばアンケートなんかでどのぐらい増えたとかそういうようなこともあると思いますけれども、1つちょっと見ておりましたら、例えば前にいただいた県ごとのご意見でも、宮崎県なんかの評価結果のところを見ていましたら、要するにこの施策によってある耕作放棄地の面積が耕作放棄が起きないように確保されたと。それは言ってみれば、今までですと毎年何%ずつぐらい耕作放棄が起こっていくというような傾向、トレンドにあったものが防がれたというようなことで、言ってみればこれは計算上のことではあるのかもしれませんけれども、一定の仮定をおいて何haぐらいの耕作放棄の発生を防止する効果があったというような分析もされているんですね。
こういうのは一般的には、この施策によって耕作放棄、具体的に何ha復旧されたか出ると思うんですけれども、防止の方はなかなか出ないわけでありますので、従来のトレンドを用いて、例えばどのぐらいの耕作放棄の防止の効果があったというようなことがもし言えるとすれば、これは国民の皆さんに対する施策の効果としてはかなりわかりやすい表現になるのかなと。これは県の分析を見て思ったんですけれども。
例えばそういうようにこの部分につきましてはやはり、私たちはどうしても、定性的な評価が中心になりますし、こういうきちっとした5年間で全てデータがそろっているわけではないのでそういうことではあろうとは思いますけれども、この分野につきましてはできるだけ定量的に説明できる部分につきましては、一定の条件を置いた試算であってもそれを入れつつ、できるだけ定量的にご説明をしていった方が国民の皆さんにはわかりやすいんではないかという感じがいたします。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
大事なご意見なんですが、定量化する視点で明らかにするのは、恐らくこれは小田切委員のご意見だと思いますが、1、2、3にかかわる部分をできるだけ定量的に表現するというふうに受け取ってよろしいですか。
野中特別委員
そうですね。政策全体の効果をということですね。
佐藤座長
2つ目の段落は、そもそも政策目標を量的に示していないから評価しにくいというご意見だったんですが、スタートするときに量的に目標を掲げていなかったので、だからしなくていいというわけではなくて、やはり可能な範囲ではするというようなご意見ですね。
野中特別委員
そうです。
柏委員
今の野中委員に関連するんですけれども、特に2ページの[1]、[2]、[3]で言うと、やはり[3]がポイントなわけです。そこから[1]、[2]とが派生的に生まれてくるわけですけれども、[3]に関してどのように量的に効果があったのかどうなのかを示していく必要があると思うんです。もちろん耕作放棄はかなり減っているということもありますけれども、しかしその将来を担保するのは、やはり将来に向けた営農継続のためのシステムが作られてきているかどうかにかかわってきます。このように表面的な指標も大事ですけれども、根本的な指標をきちっと押さえる必要がある。
すると、先程ブロック別、地域別に資料2の5ページなんですけれども、担い手の定着等を目標とした取り組み状況、これがある程度その答えの1つなのかもしれません。でもこれを見るとかなり、事後と事前、前と後の関係がわからないんですけれども、もし支払制度のおかげでこういう状況になったとすれば、これはすごいパーセンテージと見れる、しかし実際はこの5ページの数値、例えばオペレータの育成・確保、全国レベルで見ると43%育成・確保されてきたとか、認定農業者が全国レベルで3割になってきたとか、数字として見ると確かにすごいんですが、しかしその質的な内容をきちっと把握していかないと、この数字に幻惑される可能性があると思うんです。
例えば前望性のないタイプの集落営農みたいなもの、高齢者の輪番制のオペレータ、そういった継続性に欠ける、けれども、とりあえず数年間ぐらいはやれそうな人たちをかき集めて営農集団をつくったとか。それはそれで、できないよりははるかにいいんですけれども、やはりそうでなくて、ある程度新しい地域営農システム、例えばオペレータにある程度前望性のある、例えば収入分配にしても、営農形態、給与体系にしても、そういった面から見ても非常に前望性が見られるような状況を、例えば何らかの代理変数をとってもいいと思うんですけれども、そういう形でもう少しきめ細かな情報がわかるようなデータを出していく必要があるんだろと思います。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
中山間地域振興室長
今のを補足しますと、5ページ目は集落協定を最初に締結するときに、例えば認定農業者の育成を目標とするという意思表示をした協定数の割合が、という意味なので、実際にそれで育成されているかどうかは全くここには出ていない。
例えばこの同じ指標でいきますと10ページ目には、うちの方でも聞き取りをやったわけですけれども、実際どうだったのかという数字が出ているとか、あるいは前回より、前回出た以前の検証でも若干の、去年10月に全集落協定の調査をやった結果どのぐらいそれぞれで新規就農者が増えているとかというような調査をやっていますので、そのレベルの数字はあります。
計画部長
そういう意味では、10ページの資料は成果の方ですので、10ページの方の資料ですね。だからこれを見てもそれなりの数字には、一見は見える。ただし、今先生ご指摘のとおり、質的なものまではここは必ずしも把握はされていない。ただ、認定農業者は全国でも23%増加しているというのは法律上の制度で一応ありますので、そこそこの話かもしれないという。
佐藤座長
書き方としては、5ページの取り組みの結果として10ページのようなものが得られたというふうに、先程野中委員がおっしゃったようにできるだけ量で表するということに対応するということです。
野中特別委員
ただちょっとその点について言いますと、今の座長のおまとめについては特に異論はございません。ただ、全体的な評価としては、ほかの項目にも絡むんですけれども、担い手の育成というのは別にこの政策だけでやっているわけではないわけですよね。この政策で一番大事なのは、耕作放棄なり何なりが防止されたり復旧されたりしてそこで多面的機能が発揮される。最低限そのことであり、それから次に引き続き持続的にそういう状態が続いていける可能性を残しているということなので、そこのところをしっかりできれば数量的に説明できるものはしたらいいんじゃないかということです。
あわせて担い手等について効果が出ているということに触れることについて、異論はございません。
佐藤座長
どうもありがとうございます。
小田切委員、先ほどの野中委員のコメントの1、2、3の順番を少し変えた方がよろしいのではないかというご意見ですが、いかがですか。
小田切委員
その前に今の野中委員のご発言ですが、私はまさにそのとおりだろうと思います。その上で順番のこととも絡んで若干発言させていただきますと、これは野中委員ご指摘のように基本法の第35条第2項をいわば因数分解した結果として書いたものであります。
私は、やはり[1]に重点が置かれているというふうに思っています。と申しますのは、日常的営農活動の継続、そしてそれに伴って出てくる多面的機能、つまり通常の営農活動の範囲内で形成された多面的機能、ここが恐らく評価の基軸なんだろうと思います。その意味では、ここの[1]が「守り」に相当します。
しかし一方、基本法第35条第2項は「適切な」という形容詞、そして「継続」という条件をつけております。それが[2]、[3]に相当するんだろうと思います。[2]としましては、積極的な活動による多面的な機能の増進。つまり、従来の活動から一歩踏み出したもの。ただし、これは制度検討委員会のときに佐藤座長自ららおっしゃったように、農法を変えるような大きなものをここでは要求しない、そういうことが合意としてもあったんだろうと思いますが、そういう意味で一歩踏み出したような多面的機能増進活動が[2]として評価され、そしてそれに加えて先ほど柏委員がおっしゃったような営農継続のための取り組みが[3]として評価される。つまり、[2]、[3]がいわば「攻め」を想定しているんだろうと思います。
その点で申し上げれば、[1]については当然のことながら100%の効果発現が求められる。それが目標でありまして、しかし[2]、[3]についてはそれが100%必ずしも必要あるものではないと考えております。
ここについて例えば3分の1程の動きが必要だとか、あるいは半分以上の動きが必要だとか、そんな政策目標を掲げるのかどうかというのは大変微妙なところだろうと思います。先程野中委員がおっしゃったように、この制度だけで[2]、[3]は実現できないものとすれば、なまじ数値的政策目標を掲げることによる混乱が著しいんだろう、そのように私自身は思っております。
そういう意味で、1についての定量的な評価を中心として、[2]、[3]については現時点では定性的な評価にならざるを得ない、そのように感じます。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
少なくとも[1]がこの制度の主目的であるということには異存はないと思うんですね。2と3をどのように取り扱うということですが、そう意見が違うようでもないので、先に進めさせていただいてよろしいですか。
柏委員
ちょっといいですか。よくわかります。この整理でいけば、[1]は確かに主目的なんです。ですから、これさえちゃんと成果があがれば、この制度としては満足いくものであるといえます。[2]、[3]はその意味ではそれにプラスするものであるという考え、これで私は納得し、全く異存ないんですが、しかし[3]に関して私はさっきからこだわっていますけれども、[3]が担保されないと[1]は絶対に崩れてくるんです。
[1]、すなわち日常的営農活動がどんどん崩れていっているというのが、中山間過疎地域の特徴中の特徴であるわけです。ですからここ数年、5年ぐらい例えば耕作放棄が減ったとしても、[3]がきちっと担保されていないと、確実に[1]というのが、次の代になったときにはもう目も当てられないような状況になってくる。そうなったら、今まで合計して何百億円、いや何千億円使ってきたことがサンクコストになってしまったのではないかということが批判されると、これはもうどうしようもなくなってしまうわけです。ですから、やはり[3]というものを、[1]を担保するものとしてきちっと考えていかないとだめだと思います。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ご意見はわかるんですが、制度設計のときにもそのように意見が出たし、この制度自体もそのような位置付けだと思うんですけれども、中山間地域等直接支払だけで現在中山間地が抱えている問題を解決し得るものではなくて、だから総合的な対策をとらなければいけないということだと思うんですね。そういう中で、3は総合的な対策があって初めておっしゃるようなことが実現する可能性が高まって、中山間地域だけの成果をここにウエートを置いて評価するということがかなりつらいのではないかなと僕は思うんです。その辺はどうですか。
柏委員
全くそのとおりじゃないでしょうか。ですから、私は制度設計のときに、この制度は中山間対策の先駆けであって、必ず後発の総合的な中山間再生政策というものを出す必要があると提起した時に、「やる」という回答を聞いた覚えがあります。もちろんそういう努力を今後もされていかれると思うんですけれども。ということで総合的な再生政策の中で[3]も当然考えていかなければならない。これに関しては全く異議ありません。
ただし、直接支払制度、これは例えば来年度からも続くとして次の5年後、これを人口論的に見た場合、今本当にかなり厳しい状況が日に日に迫ってきているという状況をどこかできちんと考えておかないとまずい。ですから後発の総合的な中山間総合対策がおくれているからといって、[3]を軽視するというようなことがあっては、本当に数千億円かけたこの制度自体がサンクコストになってしまうということ、これを私は非常に心配しております。しかし、佐藤座長の言うこと自体に異論はありません。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
先に進めさせてもらいます。耕作放棄の発生防止。
内藤委員
私も座長の言うことに反対ではないんです。柏委員と同じように非常に後継者問題というのを心配しておりまして、これをちゃんとしておきませんと、多面的機能も全然なくなります。根本的にあるのはやはりその点だと思いますので、その点もやはり踏まえてやっていただきたいと思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
では、次に移らせてもらいます。(1)耕作放棄の発生防止及び多面的機能の増進についてですが、右側に留意点がございまして、耕作放棄の発生防止についての確認行為のされ方、先ほど事務局から説明がありました。そんな留意点を踏まえながら、2つの項目についてご意見をいただきたい。
お願いいたします。
野中特別委員
この点につきましても先ほどの点と絡んでくるんですけれども、3ページの真ん中あたりに他の政策と比べて費用対効果がどうなのかという点が確かに外部から疑問を呈されるわけでございます。一方、その下にありますようにわずかなお金で効果を上げていると。私も心情的にというか、感じとしてそう思うわけでございますけれども、できればこの辺がもう少し具体的に立証できないか。
つまり、他の施策といいましても耕作放棄になったところの復旧であるとか何かを例えばハード事業なりほかの事業でやった場合には、多分相当お金がかると思うんですね。これは集落の皆さんが協力してできるだけやろうとしているので、相当経済効果的にも安上がりで大きな効果を上げているというふうなことがわかるわけです。それをある程度立証できれば、その下にありますようにわずかなお金というのはいいかどうかは別として、お金の割に集落の皆さんの創意工夫といいますか、自発的な動きで相当大きな経済効果が上がっているということは言えるんじゃないか。むしろそれはある程度の前提を置いても、先ほどのことで申し上げれば、試算的にも示す方が国民の皆さんにわかりやすいんではないかというふうな感じがいたします。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
小田切委員
今の野中委員のご発言、一種の費用対効果を計測すべし、という話ですが、確かに計測できる部分もあると思います。ここでは強調されておりませんが、農振農用地の再編入、これが約1万2千ha弱この4年間で実現した。例えばこの農振農用地を確保するためにどのぐらいのお金がかかるのか、そんな計算もできるだろうと思うのですが、一方、定性的にしか評価できない効果もあります。例えば耕作放棄の発生防止の一つの条件として、集落協定を使うことによって守るべき農地を明確化したという効果があると思っております。
これはなかなか従来できなかったことでございまして、少なくとも集落協定で、そして対象農用地とすることにしましてこのエリア内に5年間耕作放棄を出さない、すなわち中山間地域から耕境を設定したという、そんな大きな意義が存在していると思います。しかしながら、ここのところはなかなか経済評価はできないところでございますので、そういう意味で費用対効果の計測は限界含みだということを承知の上でするべきだろうと思います。
柏委員
先程の野中委員の話につながることかもしれませんが、3ページの真ん中下にある、「本制度はわずかなお金で大きな効果を上げている」という評価をすべきではないかと、どなたが言われたかちょっと忘れましたけれども、これはどんどんアピールしていいと思います。わずかなお金かどうかはちょっとわかりませんが、重要な効果をもうこの制度はあげてきたのであるということをまずアピールすること、これは非常に重要だと思います。
と同時に、さっきの担い手の問題になりますけれども、しかしながら高齢単一世代化はこういう形でどんどん続いていると。こういう高齢者が必死になってこの制度を利用して農地を守っているという厳しい現実もやはり明示すべきだと思います。「88歳のあの方」があれぐらい頑張ってやっておられる、全国的にもそういうかなり高齢者たちが奮起してやっている。そしてこれだけの効果を上げていることを説明する。しかし、人口論的に見ると、これはこのままでは続き難いことも明示する。やはり若い担い手が、若いというか一定のまだしばらく農業活動のできる担い手を擁している地域営農システムがつくられていかないと、こういった努力がむだになりますよとアピールする必要がある。だからこそ後発の、先ほどの本格的な中山間総合対策、担い手対策、これらが早急に要求されるべきであるというふうな論理を示すべきだと思います。ですから、成果は成果としてアピールする。しかし、その成果は人口論的に見るとかなりもろい土台に立っている。だからそれを何とか強いものにしていくための次の本格的対策、もう猶予ない、とにかく急ぐべきであることをアピールする必要がある。それはもう農政改革だけの話ではなくて、省庁横断的に、例えば過疎法でハード事業に、依然として大きな予算をかけるぐらいの金があるんだったら、そっちの金を担い手対策に回すぐらい、それぐらい横断的な本格的中山間対策というものを、今制度の成果をむだにしないためにも要求していくべきではないかと私は思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
費用対効果に関しては、効果をどこまで、マネータームで拾い上げられるかということは非常に難しい部分があるので、おっしゃるように一定の制約がある中でどこまで明らかにできるか、努力をしていく。
では、次に多面的機能の方なんですが、まだここで議論いただいていないんですが、いかがですか。
野中特別委員
多面的機能につきましては、私は2つに分けて整理をする必要があると思うんですね。すなわち、耕作放棄地が防止をされたということの直接的な効果としては、そこが荒れずに、言ってみれば水資源の涵養効果とか国土崩壊防止というのは、即耕作放棄地がなくなったことによって、防止されたことによって、即発揮される多面的効果であると思うんですね。
ところが一方、それを利用して花を植えて土地の人に来てもらうとかということになりますと、これはやや工事の多面的効果でありまして、一団耕作放棄の防止だけではなくて、より一層の集落活動等がなければそこまで効果は発揮できないわけでありまして、後者につきましては話もそこまで現実的にも進んでいないし、ここの施策だけでそこまでまた求めるのもちょっと酷という感じがいたします。
したがいまして、前者の多面的効果につきましては、相当程度これで国土の保全なり何なりの効果があったということを記述すると同時に、それ以上の多面的効果につきましては、またちょっと別の視点で、もちろんそれも発揮はされているけれども、それについてはなおほかの施策とか、なお一層の努力が必要という、何かちょっと分けて書かないと一緒にまとめて効果があったとかないとかいっても非常に誤解を招くおそれがあるんではないかというふうに思います。
佐藤座長
どうもありがとうございます。
小田切委員
今の野中委員のご発言に賛成であります。
私自身の言葉を使えば、「日常的活動により発生する多面的機能」なのか、あるいは「積極的活動によって発生する多面的機能」なのか、ここのところは峻別していいんだろうと思っています。その点で事務局から出されております留意点ですが、これは周辺林地の管理、景観作物の植栽等、これだけ見ればいわば日常的活動に近いような、そういうものに多面的機能増進活動が集中している。これをどの様に評価したらいいのか、多分そんな問題提起だと思います。
ところが、これを改めていただいた資料などを通じて見てみますと、例えばお手元の資料で参考資料1の14ページをごらんいただければと思うんですが、これは既に第13回の委員会のときにいただいている資料ですが、この中でちょうど留意点に相当しますデータが出ているわけでございます。左上のデータ、周辺林地の管理等々国土保全の取り組みについて、これが協定導入によってどうなったのか、あるいはそのすぐ下でございますが、景観作物の作付等々によってこれがどうなったのかということなんですが、この[1]という回答、すなわち「協定締結前から活発に行われている」というのが、驚くほど少ないんですね。つまり、周辺林地の山腹傾斜地の管理などは、従来通常活動として当然行われていると思っていたものが、必ずしもそうではなかった。すなわち、今の段階から行うならば、通常活動、日常的活動というよりも、一歩踏み出した積極的活動として取り組まざるを得ない。その点でここの部分は積極的活動の一貫として私は評価できるんではないか、そのように思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
お願いいたします。
内藤委員
私もお二人の意見に賛成です。
この間も松代の方に行きましたけれども、あのときに山の上まで耕されて、土質的にもああいう形にしておかないと地すべりが起きると。地すべりが起きると自分たちの生活に関係があるということで、皆さん放棄地が出ないように頑張っていらっしゃると見まして、そういった面では周辺の関係といった部分で非常にこの制度は役立っていると私は思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
多面的機能に関しては、ウエートをきちんとつけるというか、分けて考えなさいというご意見ですね。
では、次のくくりに移ります。(3)将来に向けた農業生産活動等から6ページの集落機能、そして8ページの個別協定まで一括してご議論をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
では、お願いいたします。
野中特別委員
これらの2つの項目につきましては、私はこの施策の検証という意味で改めて考えてみますと、今までの項目につきましてはいろいろ効果があった、あったということを我々は分析をして主張するというかそういうことになると思うんですけれども、同時に国民の皆さんにとって非常に公平だと僕が思いますのは、余り効果があった、あったばかりで本当に信用できるのかということがあると思うんですね。我々検証するとすれば、こういう部分については余り効果がなかったということもきちんと記述をした方が、かえって効果があった点をわかっていただくのにいいんじゃないかというふうに思うんです。
そういう意味では、今から議論をしようとしているところというのは、先ほどから柏委員もたびたびおっしゃっていますけれども、我々のこの施策の中ではやはり効果としては限界があったと、そういうものであるということをまずきちっと位置づけをする必要があるんではないかということです。その上で、しかし各地に見られるように将来につながるようないろいろな芽が出てきたということをしないと、最初から正面切ってほかの2項目と同じように分析をすると、何だ、大して効果上がっていないじゃないかというようなことにもなるんではないかという感じがいたします。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。先程、柏委員がおっしゃっている継続性というのは(3)にかかわる問題だと思います。
お願いいたします。
内藤委員
この制度によって集落でのコミュニケーションが図られて、今までとは違った形で集落で取り組まれているということがわかりましたけれども、今まで言われたとおり依然として後継者というか担い手については、若い方たちが積極的に農業に入っていかない原因が、どういうところにあるかということももう一回やってみなければいけないと思っています。
平地でも大変だと言われるところに中山間地、なおさらなかなか農業生産者がおいでにならないという、その部分でも私達は検証しなければいけないんではないかと思っております。
佐藤座長
ほかにいかがでしょうか。この右側の留意点と関連づけてご意見いただければと思いますが。
野中特別委員
各論になりますけれども、5ページなんかで集落の将来像云々という留意点がございますよね。この点につきましては、各県の意見を見ましても、特に九州各県なんかの意見を見ると、やはり集落ビジョンみたいのをつくるべきだ、つくるようにすべきだというふうになっているんですけれども、これは質問なんですけれども、現行の制度ではその辺の位置づけはどうなって、したがってなぜこういう意見が出てくるのかという点について、ちょっとまず明らかにしていただきたい。
中山間地域振興室長
集落協定で記載すべき事項というのは、要するに必須事項としていろいろ農業生産活動をやるとか、あるいは多面的機能についてもさっきありました国土保全とか保健休養、自然生態系、これら3つあるうちの1つを最低限やりなさいという選択肢になると思います。
集落の将来像については任意事項としての位置づけなので、例えば新潟県なんかは非常に活発にやられているというように聞いておりますけれども、あくまでこれはそれぞれ任意の自主的取り組みだという位置づけで現行の制度ではやっております。
佐藤座長
ほかにいかがでしょうか。
小田切委員
いずれも野中委員がご発言されたことは賛成でございまして、改めて繰り返し述べさせていただきたいと思いますが、やはり現行制度は守りに重点が置かれた制度なんだろうと思います。
この守りに重点が置かれているということは決して間違いなかったわけでございますが、それをどういうふうに「攻め」に繋げていくのか。当然、これは「攻め」といっても「守り」を基本とした「攻め」ということだろうと思いますが、ここの部分がやはりとりわけ次期対策で検討すべき点だろうと思います。その点で、ある意味ではこのこと自体が次期対策の必要性を求めている。すなわち「守り」から「攻め」へ転換するようなそんな仕組みをを更に強化するような次期対策への継続の必然性というのが、ある意味では出てくるんではないかと思います。
それから2番目のマスタープランでございますが、先ほど事務局からご回答がありましたように特に新潟県でそのことが盛んに行われています。新潟県は地域農政の独自の対応として、集落協定をつくる際に集落マスタープランをつくることをいわば義務づけております。同じような取り組みは愛媛県にも存在しておりまして、これが確かに一つの大きな可能性を持っていると私自身も思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
集落機能の活性化についてはいかがでしょうか。
これも小田切委員の意見だと思いますが、集落機能の活性化については、サブ評価項目の位置づけの方がよろしいのではないかというご意見もありますが、いかがですか、そういうことも踏まえて。
野中特別委員
これも中身の問題だと思うんですけれども、集落協定をつくらせているという意味は、耕作放棄を防止するためには、個人の活動も必要だけれども、なかなか条件が厳しいわけですから、集落全体でやった方が耕作放棄の防止になるという点があるわけです。その限りにおいては、集落活動というのは耕作放棄を防止する一つの手段であるわけですから、最低限の集落活動というのが必須というか、言ってみれば手段であるわけなので、そういう位置づけの集落活動と、それからさらに加えて、では将来その集落活動が発展してもっと特産物をつくっていこうよとか何とかというのに元気が出てきたというのは、言ってみれば副次効果であるわけですから、集落効果の中にも小田切先生が前から言われているように基本の部分と、それからプラス・アルファという部分があって、後者に対しては確かに副次的効果、しかし前者については耕作放棄を防止するための有力な手段として位置づけているからこそ集落協定云々というふうに言ってきたんではないかと思いますので、そこを少し峻別して、一緒に集落活動とか何とかというと両方入ってしまうんじゃないかという気がいたしますけれども。
佐藤座長
その辺、柏委員はいかがでしょうか。
柏委員
さっきから私は単純に考えているんですけれども、プラス・アルファの、先ほど多面的機能の部分に関する論議にもありましたが、今回の集落機能というのはそういう意味では副産物という評価もあるわけなんですが、それはそれで別にこれがないと制度の成果がなかったということではないわけです。ですから集落機能が活性化したということは副次的産物であるとしても、これはこれでまたどんどん評価していけばいいんじゃないですか。これがないからペナルティとかマイナス評価とか、そういうことではないわけですから。
ですから何かちょっとさっきからプラス・アルファ的な多面的機能の議論とちょっと似ていると思いますけれども、これはこれで、その他こういう成果も上がったということは、これは誇るべきではないか。場合によっては、例えばヨーロッパのEUの共通農政改革では、こういったものについてはさらに加算金を加えるというようないわゆる鏡餅式に今なっているんです。条件不利地域政策の補助金システムを見ると。最低限やらなきゃならない部分、その上にまたさらに何かの機能を加えたら、これだけの支払金を支払う、さらに文化的な例えばヘリテージとかそういったものを保全しているとか、生け垣にしたとかいうようそんなことをやると、またさらにお金が加算される。だから、そういう手法につなげていく方向もあると思う。ですからなぜここでこんな議論が起こるのかというのが、逆に私にはよくわからない。
佐藤座長
7ページ目の下の留意点の1つ目の○にあるように、地域政策的な効果について、本制度の成果としてどういうふうに取り扱うのかという視点がもう一方であると思うんです。そういう意味ではどうですか。
地域政策的な集落機能の活性化、むしろ本制度が直接意図しているものというよりは、地域政策的な意味合いが強い、そういうものをこの制度の成果として評価するということの視点はそもそも何なのかというふうに聞かれたときに、どういうふうにお考えですか。
柏委員
これはこの制度がその目的として達成しなければならない、確保しなければならない成果以上のものがあったということです。それは手段にすぎないにしても、プラス・アルファの活性化効果が発生したとすれば、制度の義務以上の成果があった分は、加算金を必要に応じて出していくとか、そういうシステムと連動させればいいのではないかと思います。その時、この制度のみならず、他の地域政策とリンクさせて支出するシステムにしてもよい。
佐藤座長
ほかにいかがですか。
小田切委員
この論点は、私がこの場において以前より大変強調させていただいている論点であります。
その一つの解決策として、先ほど野中委員のご発言というのが方向性を示しているんだろうというふうに思っています。ここで言われているところの集落活動を2つに分けて、すなわち集落協定をつくって対応する、まさにそのときに必要とされる活動と、集落段階でのさまざまなより発展した活性化活動を分けるという考え方に私も賛成であります。
ただし、その場合の前者の機能を集落機能というふうに呼んでいいのかどうかというところについては、異論といいましょうか、議論があり得るんだろうと思います。要するに、集落というよりも、個人ではできないから集団で、あるいは組織的に対応する、すなわち組織的機能程度の話であって、これを集落機能と呼んでしまうと混乱が生じると思います。
なお、副次的機能という形で私は高い次元の機能を呼ばせていただきましたが、これは必ずしも集落活動の活性化だけではなくて、さまざまな副次的な機能が存在していると思います。例えば思いつく限りで申し上げれば、前回も言いましたようにこの制度については地域住民あるいは農業者の制度に対する参加意識は非常に高いものがあります。緊張感を持ってこの交付金を使って、できるだけ制度をよりよいものとして継続していこう、そういう思いが現地調査によっても大変強く感じるわけでございます。多分こういうことは他の制度では余り強くなかった。そういう意味で、制度への参加意識というものが増進されたという評価もできますし、等々の副次的機能についてはそこの部分を積極的に集めることによってそれを次期対策に生かすという、そんなスタンスをとるべきではないかと思います。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
集落機能を定義するとまたいろいろな難しい議論になるから、これはさておくことして。
野中特別委員
関連をいたしますけれども、ですから今のお話からしますと、私は先ほどの多面的機能もそうなんですけれども、副次的というと何かついでにあらわれたような、要するに重要性でないという印象も与えかねませんので、これはどちらかというとはっきり言ってしまえば超過達成なんですよね。我々が達成すべき目的は達成した上でその上に、しかしそれほど期待は大きくなかったけれども、しかしそういう面も出てきているということだと思うんです。
これは多面的効果も、それから今の集落活動もそうなので、超過達成という言葉はあれとしても、副次的というのではなくてもう少し積極的な評価をした上で、本来の大目的ではなかったんだけれども、そこにもかなり芽が出てきているというような書き方で位置づけていただくといいんではないかという感じがいたします。
佐藤座長
スキピオーバー効果ですかね。それは日本語、何と言うんですか。
柏委員
というよりも追加的効果と言うべきでしょう。
小田切委員
実は私、意見書を書くときに、副次的効果にするのか、発展的効果にするのか迷いました。今の議論によれば、直接的効果と発展的効果というふうに分けて、将来この発展的効果についてはさらに促進が望まれると整理するのがよいのではないかと思います。
柏委員
追加的効果に対しては、追加的な支払いをする。これは共通農政の流れでもある。
佐藤座長
その表現は、事務局の方でご検討ください。アピールするような表現にしていただく。
ほかにこの部分はよろしいでしょうか。個別協定も含めてご意見。
野中特別委員
それこそ個々の項目、5ページの規模が大きい協定ほど効果があるとか、あるいは複数集落の方が効果があるとか、こういうのは事例でたくさん上がっているわけなので、ぜひ次回、改訂できればそういう方向で改訂した方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。論点整理のところに上がっております、どう評価するかというのは。
佐藤座長
後ほどまた若干そういうご意見もいただくことになると思いますが、今ほかの政策がどんどん動いているので、それとの調整、整合性を図る必要があります。変えるにしてもそんなに大幅には変えられないというようなことで、その中でどの程度の変更があり得るかということだと思うんですね。
柏委員
後でまた出てくることだと思うんですけれど、今の野中委員の意見には賛成です。もちろん必ず地域性というものがありますから、必ずしも大きな協定ばかりがフィットする地域ばかりではないと思いますが、やはり大きな協定をつくるということがいろいろな積極的で前望性ある活動に結びついているというデータや統計を農林水産省も出されていますし、これはこれで誘導していく方向はあってもいいと思います。もちろん地域性を押さえた上でということが前提になりますが。
ですから例えば、弱い集落と強い集落一緒にして一体的に守っていくとか、それから阿東町の事例にもあるように平坦な農地も一括して加えた大きく一体的な協定にして、そのことによって例えば団地的な転作が可能になるような効果も生まれていますし、やはり協定を大きくするということは、地域性にもよるけれども、一般的に言うと非常に効果が高いということが事例的にも、統計的にも示されてきたのではないか。こうした状況に誘導する方向は非常にいい手法だと思います。別に義務化するということではなくてです。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかによろしいですか。
柏委員
あと個別協定について、何か議論が今まで薄かったと思います。北海道の事例とかも絡んでくるからちょっと分けて考える必要はありますが。
内地の問題で言いますと、第三セクターと個別協定の関係をどうするのか。集落協定の中でプール金の幾らかを、例えば岐阜県の東白川村みたいに第三セクターにプール金を受託金として渡して支援するなどのように、集落協定の中から第三セクターをサポートするということもできるとは思います。また、第三セクター、農業公社、これはもちろん最後の農地の受け皿ですから、最初に前面に出してというのは本末転倒ですけれども、実態を見るとやはりそういった公的経営体といいますか、農業公社みたいなものが果たさなければならない役割というのがこれから拡大してくると思います。
もちろん第三セクター自体が経営構造刷新とかいろいろな重い問題を抱えていますけれども、それはそれとして、やはり第三セクターの役割や位置付けを明確にして、個別協定との関係の可能性も検討する必要がある。支払金が入るとかなり助かるんですね。一気に赤字が解消されるとかいう事例もあります。ですから第三セクターが今後、中山間でいかなる役割が期待されるのか、例えば別に稲作をやるだけではなくて、稲作ができないような急峻な傾斜のところでも、別にそこでの多面的機能を守るんだったら水張りをやって草刈りをやるだけでもいいわけですけれども、そういった役割、もう人が住まなくなったけれども、そこにはそういった大事な多面的機能が期待される農地があるんだったら、そこは稲作以外のやり方で守る。では、誰がやるか。それは農家がいなくなってできないのであれば、第三セクターの役割になってくる。そのときに、やはり直接支払うお金が第三セクターに入ってくると、これは非常に第三セクターの経営を安定させることになる。
今の状況を見ますと、大体数百万から1,000万円ぐらいの赤字を抱えたところが多いようですけれども、これが改善される可能性は高い。個別協定をやっているケースは非常に少ないですけれども、それによって赤字解消しているケースもあります。ですから第三セクターの役割をこれからどう明確にしていくか、それと直接支払いの個別協定の関係をどういうふうに位置づけていくかということは、今後考えていかなければいけない問題であると思います。
佐藤座長
データとしてはあるんですか。生産法人が1割だというふうにはあるけれども。
中山間地域振興室長
個別協定600強の中で、第三セクターは18という。
佐藤座長
18件。このところは、そもそも将来にさらに継続するかどうかということとかかわることなんですが、引き続き継続していく必要があるという認識で我々は立つということでよろしいですか。
柏委員
検討の必要性ということですか。
佐藤座長
制度の継続。
柏委員
個別協定についての話ですか。
佐藤座長
この制度自体の継続。もうやる必要はないということなのか。
内藤委員
個別協定だけの話じゃないんですね。
佐藤座長
制度全体の話。制度全体に関して、今議論しているところが。
小田切委員
私もどこで発言しようかと迷っていたんですが、この検証というのは継続の有無についてのデータを提供する、そういう意味での検証だとするならば、この継続かどうかという議論も何らかの形で項目化して議論すべきだろうというふうに思います。その点で言うと、先程申し上げましたことも含めて3つほどの点で、私は継続を積極的に考えるべきだろうと思います。
1つは、やはり先ほど使った言葉で言うと、直接的な効果が明らかに見られるということであります。これは主として「守り」の機能というふうに呼んでいいかもしれません。
それから2番目は、その「守り」に加えて「攻め」の機能も少しずつ出てきた。しかし、それはあくまでも少しずつであって、今後この機能をより強めていくためには継続する必要が出てくるということだろうと思います。
それから3番目は、やや次元が違うわけでございますが、前回ヒアリングの際に全国町村会の魚津監事から、地域の主体性が出てきたという問題提起があったかと思います。ここは大変重要な論点でございまして、ちょうど今、内閣を挙げて行っております「地域再生」、このいわば基礎的な論点を提供しているんだろうと思います。地域の主体性、あるいはもっと言えば、当事者意識が生まれてきている。そうだとすれば、この制度自体がさまざまな事業、あるいはさまざまな試みのベースの部分を築き上げてきた、そういうふうに考えて継続というものが望まれるというふうに考えます。
いずれにしても私が申し上げたいのは、その項目を積極的に、この部分ないしは最後のところでぜひ加えていただきたいということであります。
佐藤座長
1つだけ教えてほしいんです。3つ目の地域の主体性ということを明示的にあらわすと、先ほど地域政策的なニュアンスがずっと強まるような感じがするんですが、その辺はどうですか。
小田切委員
確かにそれを全面的に評価するという、目的外ということになります。先程の言葉で言えば、発展的効果ということになりますが、しかし繰り返しになりますが、地域の当事者意識といいましょうか、自分自身の問題で中山間地域を考えるというのは、これは地域を考える上での何よりもベースであります。今まで例えばワークショップを行うとか、いろいろな形で農水省もほかの省庁もアプローチしてきたわけでございますが、それを一挙に進めたことは間違いないだろうという、そんな認識を持っております。その意味では、先程申し上げたように発展的機能を全面的な評価基準とするわけにいかないにしても、その1点だけはいわばベース機能といいますか、ベースの効果として評価すべきだろうと思っております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかに。
佐藤座長
今、検証の作業するということは、ある種の制度継続にかかわることです。もう効果ないからやめろというのかどうか。
柏委員
全く継続すべきだと思います。確かに本制度が期待した効果というのが一応上がってきているわけですから、ですからまたこれを取り下げてしまえば、もとの木阿弥以上のダメージを地域に与えてしまう可能性もなきにしもあらず。ですから、やめる必要は全然ないということ。
ただし、先ほども申し上げておりますように、本制度の意義と成果ないしは実績と同時に、その限界をやはりきちっと明確化しておくということが重要です。そして、その限界を埋めるためには先ほどの新しい地域営農担い手システムの創出ということが必須となってくるわけですけれども、これを直接支払制度だけで賄えというのはかなり無理があることも説明する必要がある。であるから、当然それを強力にサポートしていく後発の中山間再生政策が必然化されるべきだと私は考えております。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
野中特別委員
今の継続の点につきましては、項目を設けてきちっと書くべきだという先ほどの小田切先生の意見に賛成です。
理由として3点挙げられましたけれども、私はそれに加えてといいますか、これはもう当然のことなので念のためということで3点ほど全体の中で扱っていただければいいと思います。
1点は、こういう施策を評価するときにやはり5年間というのは余りに効果が短いわけでありまして、政策効果を見るとすると幾つも芽が出かけているところもあるということも踏まえて、もう少しやはり中期的にといいますか、長期とまで言わないまでも、もう少し長い目で見て検証すべきであって、5年やってどうこうだからやめるとかという短期の判断をすべきではないということが第1点であります。
それから第2点目は、この政策についてはレビューのプロセスがきちっと定められているわけでありまして、各県でレビューをして、また中央ではこの委員会等踏まえてレビューをするということになっているわけでございますけれども、今まで各県のレポートを見させていただきましても、皆さん相当の効果があって継続をすべきだという強い分析をしておられます。これにつきましては、私は先ほど政策効果をできるだけ定量的にとは申し上げましたけれども、事の性格上、量にならない定性的な効果もたくさんあるわけでございまして、そこのところの分析が非常に重要なんです。そういうところも踏まえて、各県においてこの施策についての高い評価をこぞって与えられているということは、このレビューのプロセスがあるということも踏まえて、この政策を継続していくということの一つの大きな理由になるのではないかというふうに思います。
それから3点目に、しかしこういう施策につきましては、現下の経済政策を大きく見ますと、できるだけ地方にお金を丸ごと渡して、何も国の施策でやる必要ないんじゃないかと。財源を渡して各県でやってもらうべきだというような動きになっているわけでございまして、やはり国全体としてこれはきちっとやるべきだという位置づけをどこかできちっとしておく必要があるんじゃないかということでございます。
以上です。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
では、内藤委員、お願いします。
内藤委員
全くの私は素人でございまして、お三方のご意見を伺っていまして、そうだろうと、わかりました。
それで先ほど柏委員がおっしゃいましたように、本当に限界を明確化していくということが必要だと思っております。
それと、私はこういう委員会に出させていただきまして、こういう制度があるということを一番初めにわかったと申し上げまして、座長からも消費者団体としてもそういうところを消費者の人たちにわかるようなふうにしてくださいというふうにお話を伺いまして、中間点でこういうことをやっているよというのも書く必要があると思っております。
ただ非常に難しくて、どうやって書こうかなと思っているような状態でございますが、消費者というか私どもは特に農水産物、そういったものを国内産のものを食べたいという部分は皆さん持っておりますので、せっかくの農地をつぶさないために頑張っていらっしゃる方のサポートというか、それはしなければならないところはするべきだと思っておりますので、皆さん方のおっしゃること、それで結構でございますので、私もこれから続けていくということには異論はございません。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
それを項目として書くということは、最後の取りまとめの仕方ですよね。
柏委員
質問は可能でしょうか。
今の野中委員と関連するんですけれども、各県、非常に成果が上がったと喜んでいると、こういった支援は必要であると言っていると同時に、三位一体財政改革、分権化の議論の中で国の管轄から外すべきだというような全国知事会の提起した議論もある。ですからさっき言われたように国が各県にこの対策を移譲するんではなくて、次年度からも国が主導してやっていくという論拠をどういうふうに考えておられるかということをちょっとお尋ねしたいんです。どなたでも構いませんが。
佐藤座長
野中委員ですか。
柏委員
いえ、違います。
佐藤座長
事務局ですか。
柏委員
その辺、一応説明できるようにしておいた方がいいんではないかと。
計画部長
三位一体の話は、ご案内のとおり今3兆円の積み上げ作業というのを地方関係団体の方でやっておりますけれども、正直私どもとしてそれにどうのこうの言える立場ではないということで、それを見守っているという状況ですが、私どもとしては当然のことながら本制度につきましてはまさに条件不利地域対策、逆に言えばそれぞれの地方公共団体が、特に弱い地域を対象にしている本制度の趣旨からいって、そこに対しては国としてきちんと明確な対応をとるという仕組みを提供すべきではないかというふうには考えております。
ただ、この間官庁速報だったか、知事会か何かの事務方発言がございましたけれども、制度は必要であることは認識しています。ただし、財源をきちんといただければいいんだと、こういう知事会かどこかの事務局の話も出ておりましたけれども、ではそれでなぜいけないのかと言われるとなかなか苦しいところもあろうかと思います。ただ、私どもとしては、税源移譲という形で渡ったとしても、そもそも私どもの一つの心配は、税源移譲がきちんと本当に、今国が補助金として出されている金が現実に税源移譲されたときに個々の市町村、中山間の市町村までその金が行くか不安という、これは役人的何とかだといつもマスコミが批判する言葉ですけれども、それが一つ。
それと、現実にだからといって選択制に任せるというより、やはり国としてこれは提供すべき制度であろうというふうに国としては考えているという、両面から国として実行すべきものではなかろうかというふうには考えます。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
その点いろいろ議論すると、時間が幾らあっても足りませんので、先に進めさせていただきます。
最後、4番目になりますが、9ページからの3、制度の基本的な枠組みについて、9ページから12ページまで通してご意見をいただきたいと思います。
野中特別委員
これは必ずしも私も自分の意見というかあれですけれども、質問的に申し上げますが、この分野では各県のご意見を伺っていますと、今の条件のままでは集落が分断されて、集落のまとまりがかえって悪くなると。一定の条件はつけつつも、集落全体で取り組めるような仕組みが必要ではないかという意見が北から南まで非常に多いように思いまして、それを見る限り私は非常にもっともな意見ではないかという感じがいたしますけれども、ただこの点につきましては制度の根幹として事務局的に何か非常にまずい改善できないようなことがあるかどうか、そこのところはちょっと質問として伺わせていただきたいと思います。
中山間地域振興室長
1つはWTOの農業協定で緑の施策というのがありまして、この条件、中山間地域直接支払は条件不利地域施策として位置づけているわけですけれども、そこに対象となる対象者というのは要するに条件不利についての客観的な指標、ちょっと細かい表現は今出てきませんが、客観的な指標なり裏づけされたものというような緑の施策の条件が一つとして規定されているということがあると思います。
野中特別委員
そういうことなら、例えば条件不利地域についての対策をそうでない農家も入って、集落全体で取り組むということであれば十分説明は可能なような感じもしますが、どうなんでしょう。
計画部長
そういうので言えば、誰に幾ら渡すといいますか、WTO上はまさにそういう積算のもとでそこにお金を渡せばいいんであって、それを使う際に平場も含めたような例えば集落全体で集落を守ろうという協定のもとで使っていくこと自体は現行制度でもそれは可能です。
この前山口へ行かれた先生もいらっしゃいますけれども、あれは市町村が独自に平場に1,000円渡して、協定としては平場も含めた協定をやっているわけですね。国がその1,000円分を平場の農地に渡すのはWTO協定上は問題だろうと思いますが、平場も含めた協定をつくること自体は現行制度も可能ですし、ただ現在余りそれを積極的に宣伝はしていない。ただ、一つの今後の次期対策の課題として、先ほどの広域的なという話もございましたけれども、あわせて例えば守るために一番いいエリアというのを考えることを誘導するということは、一つの手法としてはあり得るのではないかというふうには考えております。
柏委員
まず、個人支払としての根幹は残してそれを土地改良償還金など多様な用途に利用してもらう。それに加えて地域支払的な効果を醸し出していく。例えば阿東町のように平場水田にも1,000円払ったり、誘導したりとか、そういうことも含めていろいろそういうことができるわけです。ただ、ちょっと先ほど室長が言われた、やはり個人支払いにして平場との格差を払っていくという手法のみがWTOで許されているというふうな表現をされましたけれども、地域支払い自体は否定されていないんです。
例えばEUの共通農政の「第2の柱」、あれは農村開発、まさに農村開発が第2の柱なんですけれども、そこでは地域支払い的な、要するに生産を刺激しなければいいわけで、地域支払い的なことはWTOの青の政策の範囲内で十分できるということは一応押さえていた方が良い。
計画部長
ただ、いわゆる地域支払い的にはあり得るんですが、それはいわゆる条件不利地対策とはまた違うジャンルになりますよね、そういう面で言えば。
柏委員
事実だけ申しますと、条件不利地域でも、平場でもそれは関係ないです。
計画部長
関係ないからやればやれないことはないんでしょうが、ではそのエリアをどうとるかというのはまた全然違う観点で何か考えていかなければいけないということがあると思います。
いわゆる中山間地域対策という概念と地域政策的概念がややごっちゃになるような、仕組みとしてあり得ない……
佐藤座長
むしろ地域政策に移行したような。
計画部長
あり得ないことはないんだろうと思いますけれども。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ここのところは右側の留意点にもありますが、1haの団地の議論これは現行の運用で対応できるということのようですが、そんなことも含めてほかにいかがでしょうか。
小田切委員
この部分について意見書を提出させていただきまして、一言で言えば、対象地域、対象農用地等々の制度の部品に対しての評価と同時に、その部品によって組み立っている制度全体の枠組みとしての制度といいましょう。枠組みとしての特徴、ここでは3点ほど指摘しておりますが、集落重点主義、あるいは農家非選別地、そして地方裁量主義、意見書ではそれぞれ主義を原則という言葉で表現しておりますが、いずれにしてもこうした立体的な中で評価する必要があるんだろうと考えています。
その点で言うと、集落重点主義と言われているものをどう評価するのかということについては、やはり課題が残っているんだろうと思います。集落重点主義というふうに言ったらいいのか、必ずしも集落ばかりではありませんのでいろいろな表現があるにしても、集落的機能あるいは集団的機能の発揮を土台として、そして農業生産活動の継続を通じて多面的機能を保全する、この方向性が間違っていなかったんだろうと思います。ただしこれが余りにも強いものであると、おのずから地域性に対応した柔軟性というものがなくなっていくんだろうと思います。
その点で先ほど出たようないわゆる集落支払い、これは集落重点主義を一種極限まで追求したものでありますが、それとはまた逆に個別協定に対して光を充てるという意味での弾力化、その両者の道が必要とされているんだろうと思います。それは次期対策のことですのでここでの話ではないにしても、いずれにしても集落重点主義については高く評価されると同時に、幾つかの課題が残っていると感じております。
佐藤座長
どうもありがとうございます。
限界集落の取り扱い、これは何かお考えありますか。
小田切委員
限界集落問題、大変難しい問題であります。あるいはそれ以上にこの直接支払制度がいわゆる手上げ方式であることによって、地域間の格差を増大させている。つまり、地域間の格差を補てんするこの仕組みが中山間地域の内部の格差を増大させている可能性すらあります。我々の調査研究によってもそこの部分が徐々に明らかになっているわけなんです。そして、そういったこの制度になかなかのれない、あるいは制度をうまく活用できない、そうした地域をどうすればいいのかということが当然議論となるわけなんですが、私自身はもうしばらく見る必要があるんではないか。すなわち、そういうところを限界的集落あるいは限界集落という形で切り捨てて他の制度に乗せるということではなくて、この制度自体が必ずしも手上げ方式にしても集落重点主義にしても、地域住民、農業者が慣れたものではない。もうちょっと様子を見ることによって、それに慣れてくる可能性もあるんだろうと思っています。その上で、限界集落問題については5年後ないしは10年後に決着をつけるという姿勢が正しいんではないかと思います。
佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかの論点について、いかがでしょうか。
少し事務局として頭が痛いのは、12ページの4、他の政策との整合性の留意点の2つ目の○ですが、複合して効果があらわれている中をいかに直接支払制度の効果として切り出すかという難しい問題がありますが、この辺についてお知恵をいただければと思います。
小田切委員
積極的な回答が得られないことを承知で質問させていただきますが、ここで書かれていることは恐らく農政改革の主要3課題というふうに表現されております現下の改革課題の中で、環境・資源保全との関連をかなり意識した表現ではないかと思っております。当然、そちらの検討がどういう状況なのか、あるいはどういうことが腹案レベルでも出てきているのか、それがなかなかテーブルの上にのっていないと議論できないところでありますので、お答えできる範囲内でその辺の状況をご説明いただければありがたいと思います。
佐藤座長
現状で。
整備部長
柱が3本ございまして、別途の企画部会の方でやっていただいているんですが、中山間のこれを考えたときに、地域資源というものだけがかかわるのではなくて、担い手でありますとか、農地制度も何も耕作放棄が見られるのが中山間だけというわけではありませんので、その辺が全部関係してくるかと思います。
今月末から来月の初めにかけて、これも予算要求との関係がございますので中間取りまとめというようなことを想定しておりますけれども、実のところ余りそこまで詰まっている状況ではないと私どもも認識しておりまして、主に当局は地域資源のところを担当しているんですけれども、地域資源に対して地域支払いのような、直接支払いというといろいろな概念がまた入りますので、というようなところまではあるんですけれども、特にその中で条件不利がどうであるかということまでは、まだ詰まっているところまではいっておりません。
ただ、中山間のこの政策を考えるときに、余りに他のことをあわせて考えますと非常に議論が混乱してしまうのではないかと思っておりまして、そこはどこかで調和させなければいけないだろうなとは思っておりますけれども、そんなところぐらいしかちょっと説明できないんですけれども。担い手につきまして平場と中山間で、条件の不利性ということがあるんでしょうが担い手として見た場合にどうなのか、農地なら農地の利用として見た場合にどうなのかというのはまだ今後の課題だろうと思っております。
柏委員
逆に農水省の枠に限った場合に、他の中山間地域対策というのは具体的に何を意味しているのでしょうか。特定農山村法、そして本制度、あと何を想定しておられるのか。
むしろ総務省のやっている過疎対策との関連とか、そういうあたりまで広げて省庁横断的という形で総合的な対策をつくるという意味だったら、多様な発想が出てくると思うんですけれども、むしろそういった形であればいろいろ意見が言えるんですけれども、ここでは、農政の内部の施策ということで論じてかねばならないのか。
佐藤座長
ここは、今我々が検証の対象としている直接支払制度の効果を見るときに、あわせていろいろ行われている。直接支払以外行われるところもあります。そういう複合的に担っている部分の中で、この直接支払制度の効果をどうえぐり出すかということで、この辺は前回かの委員会で野中委員からもそういうご指摘がありました。相乗効果的に出ているのに、効果あると言ってもそれは余りフェアではない。直接支払いに限定したときにどこまで何が言えるかということです。
計画部長
なかなか切り口が難しくてあれなんですが、例えば一番の目的は農業生産活動の継続だとしても、中山間とは別に銘打っていませんが、生産対策、いわゆる農業の通常の生産対策にしても、担い手対策にしても、中山間でも同様に施策が講じられているわけですね。あるいは中山間対策としては山振事業でありますとか、土地改良でも中山間向けの総合対策みたいな意味での事業もやっておりますけれども、当然そこで農業が継続されていると、中山間というところで。これは直接支払いだけの効果ではなくて、まさにハード施策、それから耕作放棄対策なんていう一種のソフト施策もございますけれども、そういったものが相まってやられるとすれば、その中で直接支払いの効果というのは特定できてはじけるんだろうかと。これは一番正直に言いますと、財務省あたりは例えば毎年国費で二百六、七十億円、農家レベルでは500億円を超える金、これが5年間やったらすごい金に、何千億という金になっているわけですが、それに応じて、ではどういう効果があるかというときに、まず効果を先ほど各委員の方からも何らかの試算をしてはじくという手もありますが、ではその効果というのが試算したとしても、直接支払いの効果と言われると特定できるかと言われるとまだなかなか現実は難しいです。
ここで言っていますのは、直接支払いの効果と特定できるような何かお知恵がございますかという話が一つと、先ほど来、柏先生がおっしゃっていますように、では今後の中山間対策としてすぐ農林水産省なりのいろいろな施策、さらに言えば、他省庁のいろいろな人が来る、こういうものとどう、当然群小的に言えば連携を図っていきましょうというのが今一番単純なあれですけれども、今後のあり方としてどうあるべきかという部分と、これはちょっと言い方がひどいですが、現実の効果をどう実際把握したかのように例えば書けるようなお知恵があるでしょうかという両面が実際はございます。ここで書いていることの意味としては。
佐藤座長
その辺を、次回の検討会までにお知恵を出していただきたいと思います。
大分予定の時間も過ぎてしまいましたので、この辺できょうのところのご議論は閉じたいと思います。
冒頭の局長のごあいさつにもありましたように平成17年度の概算要求前までには取りまとめを行う必要があるということですので、次回にはお許しいただけるならば、取りまとめのたたき台のようなものを用意させていただいて、それを踏まえてご検討いただくというふうな進め方にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
小田切委員
一つそういう予定だと気になるのが、通常行われるパブリックコメントの時間が多分ないんだろうと思います。7月末にこの素案が出てきて、そしてここで議論してということになるわけなんですが、例えばパブリックコメントに代わるものとして、今回の議事録が早目に出てくればそれを素材としていろいろな意見集約ができるわけです。その意見の窓口を明確に農水省内部に設定する。こういうことがこの委員会で議論されて、それに対して各県、各市町村あるいは各集落協定からの意見を求めるようなことができないかご検討いただきたいということであります。
佐藤座長
その辺はいかがですか、今の段階で何かアイデアは。
中山間地域振興室長
今は、ちょっとまだ特にその辺について明確な考慮はしていないです。
佐藤座長
それはおっしゃるとおり必要ですよね。
計画部長
手法として、今のホームページでも農水としていろいろなご意見をいただくアドレスはありますので、例えば中山間の議事録なり資料も全部ホームページにやっておりますので、その中に「意見募集」と一言入れれば可能でしょう。それ自体は大したわけではないと思います。今でも受け付けは自由という状態にはなっていますが、ただし積極的に意見くださいとは言っていないですよね。
中山間地域振興室長
ないです。
佐藤座長
コメントを出された方がきちんと受けとめられたと感じられるような形で窓口をきちんと用意するということですね。
小田切委員
はい、そういうことです。
佐藤座長
それはお願いいたします。
事務局の方であと何か連絡事項ございますか。
中山間地域振興室長
次回の検討会につきまして既に委員の皆様方と日程調整に入らせていただいておりますけれども、正式に決まり次第、ご連絡差し上げたいと思っております。
それから本日の議事録につきましても、公開前にこれまでと同様、各委員のご発言内容を確認するためにご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
佐藤座長
きょうはこれで終わりにしたいと思いますが、ほかに委員の方、特にご発言ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。これで終わります。
(午後3時30分閉会)
お問合せ先
農村振興局農村政策部中山間地域振興課
代表:03-3502-8111(内線5632)
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