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農林水産省

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aff 2024 JANUARY 1月号
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おいしい“地元”の食べ方入門~東日本編~

特集
ニッポン丸ごといただきます!
ニッポン丸ごといただきます! 01 おいしい“地元”の食べ方入門~東日本編~
全国各地の地元に根付いた地産地消の取組と、地元ならではの興味深い食べ方をフードジャーナリストの向笠千恵子さんに紹介していただきました。

監修・お話

向笠千恵子(むかさちえこ)さん
向笠千恵子(むかさちえこ)さん

フードジャーナリスト、食文化研究家、エッセイスト。
日本の本物の味、安心できる食べもの、郷土料理、伝統食品づくりの現場を知る第一人者。
「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」有識者懇談会委員

地産地消からおいしいものが生まれる

郷土料理には、その土地に暮らしてきた人々に受け継がれてきた、生活の知恵が凝縮されています。料理そのものだけでなく、お皿に盛りつける前の食材にも、それらに関わる独自のストーリーがあります。こうした背景を知っておくと、さらに料理が楽しめ、味が深まります。地産地消推進はそれを確かめるのに最適な取組です。

鳥獣被害防止のため
捕獲したエゾシカを
自然の恵み
としてジビエに

北海道阿寒郡鶴居村
ハートンツリー

エゾシカ

北海道全域でエゾシカによる農林業への被害が深刻になっており、エゾシカの個体数の管理は重要なテーマ。

北海道の東部にある釧路湿原に囲まれた鶴居村では、国立公園の対策協議会等と情報共有や連携をし、自然環境に配慮しながらエゾシカの捕獲を行っており、ジビエとして活用しています。ハンターによる狩猟や、大型の囲い罠で捕獲したエゾシカは、村内にある加工処理施設で精肉や加工品として処理。鮮度の良いエゾシカ肉を味わえる環境が整っています。地域資源としても生かされており、村ではその土地の食文化に触れることを目的とした旅(ガストロノミーツーリズム)を提案。村内の様々な飲食店でエゾシカ肉の料理を提供しています。

地元ではこう食べる!
鹿肉のローストブルーベリーソース

豊富な鉄分と赤身が特徴のエゾシカ肉。焼いたり煮込むなどしていただきます。鶴居村のエゾシカは、ほどよく脂が乗っていて美味。写真は「鹿肉のローストブルーベリーソース」。
提供/ハートンツリー

向笠千恵子(むかさちえこ)さん

日本のシカ肉料理はかつては和風で食べられていましたが、近年、洋風に調理されるようになりました。鶴居村はフレンチに取り入れ、チーズやワインなど地元産の食材と一緒に、トータルで地産地消を楽しむことができます。

伝統の「南部もぐり」で
水揚げされる
天然ホヤ

岩手県九戸郡
洋野町(ひろのちょう)
はまなす亭

南部もぐり

ダイバーが「南部もぐり」で海底から天然ホヤを収獲。その潜水技術は現在も同町の岩手県立種市高等学校で教えられている。

真っ赤な天然ホヤの水揚げ

真っ赤な天然ホヤの水揚げの様子。

岩手県九戸郡洋野町のホヤ漁で行われている「南部もぐり」は、伝統的なヘルメット式潜水を今に受け継いだ潜水技術です。もともとこの技術は、座礁した貨客船の解体引き揚げのために伝えられたものですが、その後ホヤ漁に応用。上質な天然ホヤが、同町の伝統食材になりました。天然ホヤを使った料理が人気のはまなす亭では、旨みを生かした混ぜごはん「ホヤめし」をはじめ、磯の風味が引き立つ「焼きホヤ」などが味わえます。また、同店の「ほやラーメン」は、同町のご当地グルメとしてイベントなどでも提供されています。

地元ではこう食べる!
ホヤづくし御膳

洋野町の料理が味わえる「ホヤづくし御膳」。ホヤめし、ホヤのお吸い物、ホヤキムチ、焼きホヤ、ホヤ刺しなどがていねいに調理されています。

ほやラーメン

たっぷりのホヤが入った、塩味の「ほやラーメン」。

向笠千恵子(むかさちえこ)さん

はまなす亭は県認定「食の匠」の女性リーダーが率いる人気店。「南部もぐり」ダイバーが収穫した天然ホヤ料理で、地域活性化に努めています。伝統の食材をセンスある味付けで、洗練されたメニューを開発。郷土料理を次世代につなげています。

江戸時代から
受け継がれている
壬生町の
かんぴょうづくり

栃木県下都賀郡
壬生町(みぶまち)

ユウガオの実「ふくべ(瓢)」

かんぴょうの原料となるユウガオ。ユウガオの実は「ふくべ(瓢)」と呼ばれています。

ユウガオの果肉を薄く細くむく

ユウガオの果肉を薄く細くむき、乾燥させたものがかんぴょう。
提供:(株)mf

1712年、壬生藩(現在の下都賀郡壬生町)に国替えとなった藩主が、旧領からユウガオの種を取り寄せて試作を命じたことが、かんぴょうの歴史の始まりとされています。300年以上の伝統を守り、後世へ受け継いでいけるように、壬生町では様々な取り組みを行っており、その一つが毎月1回、町内の小・中学校で実施される「ふくべランチの日」。かんぴょうを使ったメニューが、給食で提供されます。また、地元で親しまれていたわさび入りのかんぴょう巻きは、「みぶのサビかん」として商品化もされています。

地元ではこう食べる!
サビかん

しょう油で甘く煮たかんぴょうの巻きずしにワサビを添えた「サビかん」。壬生町の新名物です。

ぐるぐる巻きおいなりさん

寿司の具のように煮たかんぴょうをいなり寿司に巻き付けた「ぐるぐる巻きおいなりさん」。
提供/篠原商店

カミナリ汁

栃木県中央部は、落雷が多いことでも知られています。ノリをかみなり雲に、玉子とかんぴょうを稲妻に見立てた「カミナリ汁」は、町内の学校給食で昔から親しまれています。

向笠千恵子(むかさちえこ)さん

壬生町にはかんぴょうを使った様々な家庭料理があります。そのなかでも昔から親しまれてきたのが「サビかん」。商品化されたことで、産地のアピールにもつながっています。

伝統野菜
「吉川ナス」の種と
栽培技術を継承し
まちの園芸農業
を再生

福井県鯖江市
鯖江市伝統野菜等
栽培研究会

吉川ナス

巾着型で重さは300グラムほどの「吉川ナス」。皮が薄く、よく締まった肉質で煮崩れしにくいのが特徴。

鯖江市伝統野菜等栽培研究会メンバーの農家

鯖江市伝統野菜等栽培研究会メンバーの農家では、丹精を込めて吉川ナスを守り続けています。

1000年以上の歴史があるともいわれる「吉川ナス」は福井県鯖江市の伝統野菜でしたが、2009年に栽培農家が1戸もなくなるという危機がありました。そこで残っていた実を受け継ぎ、関係機関で種とりした種から再興に挑んだのが「鯖江市伝統野菜等栽培研究会」です。8戸の農家でスタートした同会は、2022年には21戸に拡大。栽培に留まらず、「吉川ナス」を使った加工品や料理の提供も行っています。また、地理的表示(GI)保護制度への登録により、同市のブランド産品にまで成長。GIへの登録は国内の伝統野菜では初めてのことでした。これらの取組により、改めて地域住民にも吉川ナスのすばらしさが理解され、「鯖江の野菜といえば吉川ナス」といわれるほどになっています。

地元ではこう食べる!
吉川ナスバーガー

油で揚げた輪切りの吉川ナスを挟んだ「吉川ナスバーガー」。

吉川ナスの肉みそ田楽

器に仕立てた吉川ナスを素揚げし、肉みそを詰めた「吉川ナスの肉みそ田楽」。

向笠千恵子(むかさちえこ)さん

加熱すると実がとろっと柔らかくなり、おいしい吉川ナス。田楽や揚げ物などの食べ方がぴったりです。ブランド化が進み、伝統的な食べ方以外に「吉川ナスバーガー」なども生まれ、これからもっと広く知られていくでしょう。

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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